僕は狂っていく~ぼくるい~

創作小説「僕は狂っていく」まとめブログです。 ジャンルは現代モノです。 基本的に「奇妙な話」です。

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注文 

「いや、俺は何も……」

せっかく何かを食べようと提案したのだが、この隼人くん、食欲が無いのだそうだ。
昔の人だって『腹が減っては戦はできぬ』って言っているんだから、食べれる時に食べておけば良いのに。
まあ、こんな『入れ替わり』なんていう奇妙な状況下で食事が出来る私が図太いだけなのかもしれない。

いやいや、図太いとは言い過ぎだ。
私だって混乱しているし、正直なところ『これからどうしたものか』という悩みで頭の中は一杯だ。
しかし、お腹が空いていたら頭も回転しないし、浮かぶはずのアイデアだって浮かんで来なくなってしまうだろう。
その為にも、隼人くんがご飯を食べないとしても、私は遠慮なくご飯を食べておくべき――そう思うのだ。

それに――実は混乱していながらも落ち着いて冷静な私も何故だか存在しているのだ。

不思議なのだが混乱しつつも、冷静に状況を把握している私が居る。
こんなにも奇妙な状況なのに、この状況を知っているような、無意識の内に『何とかなる』と思っているような。
開き直れている』と言われればそれまでなのだが――。

「そっか、じゃあ私あ何か食べさせてもらうね」

一応は隼人くんに断りを入れて、部屋に置かれているメニューに目を通す。
カラオケ屋ながらに充実したメニューに色々と目移りしながらも『カツカレー』を選ぶ。

「隼人くん、何か飲む?」
「あ、じゃあ……ウーロン茶を……」

まだ緊張しているのか、固い表情のまま隼人くんが答える。
そんな彼を横目で見ながらインターホンで注文を済ませて再び席に着く。
向かいのドアに移るハヤトくんの表情が『早く話を始めろ』とせっついているように見える。

――分かってるって……。

心の中でハヤトくんに返事をして、視線を目の前の隼人くんに向ける。
料理が届く前に、少しは話をしておいた方が良いだろう。
そう思いながら話を切り出す。
[ 2007/02/28 22:24 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

理解しがたいことが理解しがたい 

「あのさ、これからの事なんだけどね――」

そう切り出した私に、隼人くんは怪訝な表情を見せた。
ん?何か言い方が悪かったのだろうか?
とはいえ、これ以外に言いようも無いわけで。

などと思っていたら、怪訝な表情になっている原因と思しきことを隼人くんの方から話し出した。

「これからも何もさ……一体、何がどうなってるんだ?」

と、きたもんだ――って、また今までの経緯を説明しなきゃならないのだろうか?
困ったもんだ……とは思うのだが、仕方ないよね。
私にはハヤトくんが取り憑いている、まあ私が身体を乗っ取っているのでどちらが取り憑いているんだって話はあるけれど――それは置いておいて。
ハヤトくんが一緒に居てくれたおかげで状況は理解しやすかった。
尋常ではない超常現象であることは確かなんだけど、それでも状況を理解している立場とそうでない立場では話をするにも進捗度合いは大幅に変わってしまうだろう。

ここは……面倒臭いけどイチから説明しなくてはならないか。
仕方なしに覚悟を決める。

「んーとね、まずさ、私と貴方は『入れ替わって』る。ここはOK?」

隼人くんは首を捻る。
まあ、入れ替わっていると言われてもいきなり納得できるもんではない……か。
大前提は飛ばしてしまおう。

「そんで、入れ替わってるんだから、元に戻らないといけないのね」

隼人くんが益々首を捻っている。

うーん、入れ替わっている事実を先に納得させないといけないんだろうか?
しかし、隼人くんだって男の子なのに、女の子の身体に入っているわけで――目の前に自分が出てきて『入れ替わって』いると言われてるんだから、頭では理解しにくくても実際に入れ替わってしまっていることは否定しがたい事実のはずなのに……何をそんなに不思議がっているのだろうか
[ 2007/02/28 22:23 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

誰が誰で誰なのさ 

いや、不思議がっているという言い方は正確じゃないかもしれない。
隼人くんの様子を見るに……どうも私の説明に納得が行かず、不満そうに思っているような印象だ。
思えば、隼人くんと会ってから私が一方的に話してるような気がする
隼人くんも話してくれれば……少しは隼人くんの抱えている不満も分かると思うんだけど。

まあ、隼人くんが無口だから私が一方的に話してるような気もするんだけどさ。
ここは一つ、隼人くんが話すように仕向けてみようかな?

「えーと、ここまでで質問はあるかな?」

話を振ってみる。
不満そうな顔をしてるんだから、何かしら言いたい事だってあるはずだ。
というか、これだけ不満顔を見せておきながら何も言うことが無いっていうならばどれだけ偏屈な人なのよって話で。

隼人くんは捻っていた首を元の位置に戻して、私に向かって視線を据えた。
やっぱり……何か言いたい事はあったらしい。
何となく意を決したようなその印象に、私は思わず怯みそうになる。

「そんじゃあ――聞くけどさ」

隼人くんは前置きをした。
一体、何を聞いてくるのだろうか?
まあ、いざとなればハヤトくんに聞けば分かるだろうし、特に聞かれて困るような事も無い……はず!

「――うん、どうぞ」

少し、余裕のあるフリをしてみせる。
質問を受ける立場の私がうろたえていたりしたら、質問する側の隼人くんも安心して話も出来ないだろう。
私の返答を待つように、隼人くんは眼に篭った力をさらに強くするように言葉を吐いた――。

「そもそも……お前は誰なんだ?」

――はい??
[ 2007/02/28 22:22 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

理解に苦しむ言葉ってありますよね? 

いきなりそんな基礎的な質問をかまされるとは思っていなくて、かなり面食らうような形になってしまった。
『お前は誰だ?』って、何度も説明しているというのに……隼人くんって理解力に乏しい人だったのだろうか?

「だーかーら! 私は中道真理愛で、アナタはこの身体の持ち主の大杉隼人くんでしょ!?」

この期に及んでこんなに基本的なことを叫ばないといけないとは、せっかく自分の身体の無事を確認したというのに、この先の苦労が思いやられる
私の身体に入ってしまっている隼人くんに現状を認識させて、お互いが元の身体に戻れるように算段を立てて――何かを知っていそうな私のお父さんに話を聞いてみる事も考えないといけない。
やらないといけない事はまだまだ山積みだというのに、この私の身体に入ってしまっている隼人くんの理解の無さに少しイライラしてしまいそうだ。

私が隼人くんに入ってしまっている、ということも影響しているのだろうか?
何だか、隼人くんの態度に身内に感じるようなイライラがある。

私の叫びを聞いてなお、不思議そうに小首を傾げる隼人くんに何だかムカっ腹が立つような気分になってしまっている。
例えるならば――まるで、お父さんが天然ボケをかましてくれたような時の気分だ。

『リモコン取って』と頼んだら、テレビのではなくてエアコンのリモコンを手渡してきて、それに『違うって!』と怒ってみても何が間違っているのか理解できずに不思議そうな、ハトが豆鉄砲を喰らったような顔をしている時に感じるイライラ――上手く表現できないが、その時の感情図に極めて近い。

「ちょっと待て――お前が『中道』で、俺が……『大杉』?」

私が言ったことを、まるで確認するように復唱する。
何で今さら名前を確認しているのだろうか?
ひょっとして……『入れ替わった』のと同時に、記憶障害にでもなってしまったんだろうか?

――もしそうならば……それはそれで厄介な。

そんな風に考えていると、私が言葉を挟む前に隼人くんが意を決したように、口をキュッと結んでから言葉を発した。

「どういうことだ? 俺は『中道 隼人』だぞ?」

――へ?
[ 2007/02/28 22:21 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

密室における、第三者を交えられない密談 

記憶喪失というよりも……記憶障害なのかな?
自分の名前と私の名前がゴチャ混ぜになっているみたいだ。
そうでなければ中道隼人って……私のお父さんと同じ名前になってしまう。
うーん、何ともややこしい記憶障害だ。

「ち、違うでしょ!? 何で私の名前と隼人くんの名前を足してるのよ?」

一応ツッコミは入れておく。
間違いは訂正しておかないと、話が全然前に進んでくれなくなってしまう。
しかし、隼人くんは私のツッコミに怯みながらも自分の主張を崩そうとはしなかった。

「いや、だから何の話だよ? どうしてお前の名前と俺の名前が足されてるって事になるんだ?」

うーん、記憶が混乱してる事を自覚していないとは――全くもって厄介だ。
どうしたら隼人くんに自分が間違っていることを認めさせる事が出来るのか。
悩みかけた時に――部屋のドアのガラス部分に映るハヤトくんと目が合った

――どうしたもんですかね?

心の中でハヤトくんにSOSを送ってみる。
これまでの、私と隼人くんのやり取りを見ての結果だろうか、何だかハヤトくんも気難しい顔をしている。
しかし、何らかの理由によって魂が分かれているとはいえ、どちらも同じ隼人くんだ。
私には思いつかないようなアイデアを出してくれるかも知れない……と、若干の期待を込めてハヤトくんの返事を待つ。

私が黙ってしまったことによって、ほんの僅かな間ではあるがカラオケボックス内に静寂が訪れる。
言い合いをした直後の沈黙とあって、少し空気が重いように感じる。
が、私もヘタに話を切り出す訳にはいかない。
ただでさえ厄介な状況なのだ、これ以上の混乱を招くことは避けておきたい。
なので、ハヤトくんから何らかのアドバイスを受けてから話を仕切りなおすのがベストな選択だと思えた。

ドアに映るハヤトくんは、私からの質問を受けて少し考えるような表情を見せた後――厳しい表情のままで口を開いた。

(あのさ、さっきから気になってたんだけど――)

ハヤトくんの言葉に、正面に座る隼人くんに『見えない何か』と会話している事を悟られないように、出来るだけ表情を変えずに心の中で答える。

――何かな?

私の相槌に、ハヤトくんは一瞬言葉を出すのを躊躇うような仕草を見せた。
しかし、すぐに思い直したように言葉の続きを出した。

(――その、お前の中に居るのってさ……俺じゃないんじゃないか?

うんうん、隼人くんはハヤトくんじゃないのか……って!
それは一体どういう事ですか!?
[ 2007/02/28 22:20 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

偶然という話ではなさそうな 

「隼人くんじゃないって!?――」

と、聞き返したのは良いのだが……思いっ切り声に出てしまった。
目の前に居る私の姿をした隼人くんと、入り口の窓ガラスに映るハヤトくん。
ダブルの冷たい視線がかなり痛く、まさに『穴があれば入りたい』レベルの恥ずかしさだ。

隼人くんはいきなり叫んでしまった私を怪しい者でも見るような怪訝な表情で見つめているし。
一方、ハヤトくんは一旦私から視線を切って、幽霊のくせに大きなため息を吐くような仕草を見せている。

うう……これは恥ずかしいし、悔しい。
いや、でも――恥ずかしがっている場合ではないのだ。
この私の身体に入っている隼人くんが隼人くんじゃない、とはどういう事なのだろうか?

私は隼人くんの身体の中に入ってしまっていて。
そして、私の身体の中には『隼人くん』が入っている。
しかし、私にはハヤトくんの幽霊が見えていて。
ハヤトくんの幽霊は私の中に居る『隼人くん』が自分とは別人ではないかと言い出した。

これらの状況から導き出される答えは――私とハヤトくん以外にも、この『入れ替わり』に巻き込まれている人が居る、という事なのだろうか?
何だか凄く頭が混乱してきた。
出来れば、このまま布団の中にでも潜りこんで、じっくりと熟睡して目が覚めれば『全部夢でした!』と終わってくれればかなり嬉しいのだが――世の中はそんなに甘くないのだろう。

(お前な……声に出してどうするんだよ)

窓に映るハヤトくんが私に追い討ちを加えてくる。
その言葉に、返す言葉もない。
少し俯き加減でハヤトくんを見つめ返す私に、ハヤトくんが呆れたような様子を見せながら言葉を続ける。

(まあ、俺じゃないかも知れない。そこから確認した方が――)
「いや、俺は隼人なんだってば、中道 隼人なんだって!」


ハヤトくんが話している最中に、それを遮るように隼人くんが大きな声を出した。
隼人くんにはハヤトくんの姿も声も認識できていないだろうから、恐らくわざとではないのだろう。
ハヤトくんも、その辺りの事は分かっているようで、隼人くんのいきなりの乱入に憮然とした表情を見せながらも自分の話を中断してみせた。

ハヤトくんが言っている通り、この私の中に入ってる隼人くんはハヤトくんでは無いらしい。
しかし、私と同じ『中道』という苗字で、『隼人』という名前。
奇しくも、それは私のお父さんと同じ名前なのだ――偶然というには……出来すぎている。
[ 2007/02/28 22:19 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

アナタ……一体、誰? 

ともあれ、焦ってばかりもいられない。
何とか、無理矢理にでも冷静さを取り戻し、隼人くんに問い返す。

「ちょっと、ちょっと待って。 えーと、アナタは『大杉 隼人』くんじゃない……のね?」

まず、話を進める為には大前提である部分を聞き直す。
自分の声ながら、喉の奥から震えが来ているような感覚を覚える。

私の質問に、隼人くんは小さく頷いた。
その表情は真剣そのもので、ふざけていたり、記憶が曖昧なので私の言葉を否定しているわけでは無いという事が伝わってくる。

「さっきから言ってるけど、俺は『中道 隼人』だ。お前の言ってる『大杉』とかいうヤツの事は知らない――」

付け足すように言葉を続けて、私の質問を完全に否定する。

ということは、私の中に入っているのは……少なくともハヤトくんでは無いという事だ。
私と同じ苗字で、ひょっとしたらただの偶然で全く見知らぬ他人で。
もしかして、もしかしたら――私の『お父さん』なのかも知れない

そう思って、自分の考えを否定するように小さく頭を振る。
私の中に入っているのが……この目の前に居る『隼人くん』が……お父さんだとは思い難い。
だいたい、この隼人くんがお父さんだというならば私の事を知っているはずだ。
この隼人くんは私の事も知らない様子だった、やはり……全くの偶然で他人が私の身体の中に入ってしまったんだろうか?

こうして一人で考えていてもラチが空かない。
隼人くん本人に聞き出すのが一番早いんじゃないかと思う。

「えーと、じゃあ……アナタは……誰なのかな?」

そういえば、会ってから今まで自己紹介もしていなかったような気がする。
私は、ここに至って自分がどれほど焦っていたのかを思い知った。
[ 2007/02/28 22:18 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

真理愛の反省 

もっと慎重に、もっと注意深く、そして……もっと順序を守って行動すべきだったのだ。
ただでさえ有り得ない『入れ替わり』という状況が私の気持ちを必要以上に急かせてしまっていたのかも知れない。
しかし、それはただの言い訳だ。
そんな私の焦りが、事態をさらに混乱へと招き入れてしまい、それは取るべき行動を遠回りさせてしまう事になってしまったのだから。

思えば、このカラオケボックスに入る前にも、私の目の前に居る『隼人くん』が何者なのか確認するチャンスはいくらでもあったはずなのだ。

メールでやり取りしている時にも。
公園で初対面を果たした時にも。
バス停に向かう間にも。
バスで隣同士で座っていた時にも。
この店に入る前にも。

少しでも早く、互いに自己紹介でもしておけば。
そんな簡単な事でこんな回り道をしなくても済んでいたはずなのだ。

待ち合わせにやって来たのが、私の姿で、「隼人くん」という呼びかけに何の否定もしない人物だった。
それだけで、私はこの人を私が入ってしまった身体の持ち主である『大杉 隼人』くんなのだと思い込んでしまっていた。
そして、一刻も早く『元の身体に戻りたい』という願望を叶えることを優先するために――必要なはずのプロセスをすっ飛ばすような行動を取ってしまった。

その結果が現在である。
目の前の、私の中に居る人は『中道 隼人』と名乗っている。
それ以上の事を何も知らないのだ――。

私は、私と『大杉 隼人』くんが単純に入れ替わっていると思い込んでしまっていた。
その思い込みが、目の前の隼人くんが『大杉 隼人』くんだと決め付ける理由となってしまった。

しかし、これが『大杉 隼人』くんで無いのならば――入れ替わりから元に戻る方法まで、これまで考えていた方法がまるで通用しないかも知れないのだ。
状況は……まるで振り出しに戻ってしまったようだ

その責任は、きっと私によるもので。
再び手探りで『元に戻る方法』を探さないといけないのかも知れない。
全ては自業自得という事なのだろう。

これからは失敗するわけにはいかない。
まず、目の前の隼人くんが何者なのか。
じっくりと話を聞いておかなければ――これからは失敗しないように、そう心に固く誓った
[ 2007/02/28 22:17 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

自己紹介タイム 

「誰って、俺は……中道 隼人。十七歳だ」

隼人くんが自己紹介を始める。
口を挟まないように、黙ってそれを聞くようにしている。
ヘタに口を挟んでしまい、大事なことを聞き逃してしまわないようにする為に、今は隼人くんが話すに任せようと思う。

それに、隼人くんの『十七歳』という言葉に、私は少なからず安心していた。

――良かった、やっぱりお父さんじゃなかった。

表情には出さないが、心の中ではホッと胸を撫で下ろす。
名前が同じなだけで、私やお父さんとは関わりは無いだろう。
お父さんは四十歳の前半だし、自己紹介で嘘を吐く必要も無いだろう。

(まあ、中道先生じゃ無いだろうよ)

私の心の声が聞こえたのか、ハヤトくんが口を挟んできた。
まあ、ハヤトくんはウチのお父さんを何だかとても崇拝してるみたいで、この同姓同名の隼人くんがウチのお父さんではないという事が確定したことに私と同じく安堵の表情を見せている。

「緑ヶ丘高校の三年で、住んでるのは川東市の光が丘だ」

ふむふむ……ハヤトくんと同じ高校なんだ。
それで住んでいるのは私と同じ町なんだ。
ひょっとしたら、私とハヤトくん、どちらにも接点がある人なのかも知れない。

まあ、そうは言っても同じ高校とはいえ一歳年上の人に、同じ町に住んでいるという程度の接点だ。
面識はあるとは思えない。
ハヤトくんにも視線を送ってみるが……やはり知らない人のようだ。
首を捻って、思い出そうとしているが思い出せない、そんな様子である。

「あと……何か自己紹介してく事はあるか?」

隼人くんの方から質問を求めてきた。
やはり、いきなり自己紹介しろと言われても、何を言えば良いか分からないだろうね。
とはいえ、隼人くんが語っただけの内容では情報が少なすぎる。
何か出来る質問は無いか、そう思いながらハヤトくんにもアイコンタクトを取ってみる。

俺の事を知ってるか聞いてみてくれ

ハヤトくんが私の視線に気付き、そう持ちかけて来た。
[ 2007/02/28 22:16 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

同じ高校 

ええと、どういう風に聞くのが良いだろうか?
というか、もうこちらの情報を何も隠さずに出した方が良いのだろう。
それが原因で、ここまで無駄に話が拗れてしまっているのだろうし。

「えっと、緑ヶ丘高校なんだよね?」

私の質問に、隼人くんは「そうだよ」と短く答える。

「じゃあさ、多分一歳下の学年なんだけど……『大杉 隼人』くんて知ってるかな?」

この質問に、隼人くんは顎を手に当てて少し考えるような素振りを見せた後に――首を小さく横に振った。

「いいや、思い出そうとしてみたけど、やっぱり知らないな」

そうか……やっぱり知らないのか。
ひょっとしたら、隼人くんとハヤトくんに何かの接点があって、それに私が巻き込まれたのかな?
なんて思ってみたのだけど、どうやらそうでは無さそうだ。

と、思っていると、隼人くんが言葉を続ける。

「その――『大杉』っていうのは、お前なんだよな?」

と、言いながら私を指差してくる。
その隼人くんの動作に釣られて、私も自分で自分を指差す。

「――わた……し?」

いきなりの言葉に動揺してしまい、思考が停止してしまったのだが――。
そういえば、私は現在ハヤトくんの姿になってるんだった。
そうか、隼人くんから見れば、私はハヤトくんの格好にしか見えないんだよね。
隼人くんの質問を肯定する為に、小さく頷いてみせる。

「う、うん。中身は違うけど、『大杉 隼人』くんはこの姿だよ、見たことない?」
「うん、記憶力はそう悪くないと思うんだけど。やっぱり見たことないな」

そっか、同じ学校でも、学年が一つ違えば接触がまるで無いって事もあるよね。
何か、事件解決のヒントでも転がっていないかと期待してみたのだが――やはり無理があったか。

「こっちから一つ聞いても良いか?」

私が黙っていると、今度は隼人くんの方から話を切り出して来た。
隼人くんに向かって頷いてみせて、質問をしてくるのを待つ。
自分の考えをまとめる為なんだろうか、隼人くんは少しだけ間を置いてから口を開いた。

「この身体の中身がお前で――えっと、『中道 真理愛』だったっけ?
俺と同じ苗字みたいだけど、俺と何か関係でもあるのか?」
[ 2007/02/28 22:15 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

進展 

結局、会話の内容が同じ地点に戻って来てしまった
いや、苗字が一緒だったとしても、きっと私と隼人くんには関係ない。
中道っていう苗字自体はそこそこ珍しいとは思うけど、きっと偶然の一致だ。
まあ、中道っていう苗字に、隼人っていう名前でお父さんと同姓同名になるという凄い偶然の一致っぷりだとは思うけど……それでも、私とこの隼人くんに何か関係があるとは思えない。

というか、私はこの隼人くんの事なんてほとんど知らないのだ。
だから、こうやってお互いの情報を集めるために話をしているわけで。

「関係は……無いと思うよ。ただの偶然だと思う」

とりあえず、正直に自分の考えを伝える。

隼人くんは、私の答えに二、三回軽く頷いてみせる。
「うん」「そうだよな……」と、独り言のような呟きが聞こえる。
そんな様子に、軽い既視感を覚えた。
と、隼人くんが再び口を開く。

「うん、分かった。とにかく、俺とアンタ……それに、アンタが中に入ってるその『大杉』ってのが入れ替わっているんだよな?」

隼人くんの質問に、今度は私が頷く。
どうやら、ようやく隼人くんも現状を理解してくれて、少しだけ事態が進展したようだ。
僅かに混乱は残るものの、少しだけ安堵感を覚える。

――が、それはほんの一瞬の事だった。

「じゃあさ、俺の身体には『大杉』ってヤツが入ってるんだよな?」

ええ?
い、いや。それは分からない。
だって、大杉隼人くんは――現在、私たちの会話を幽霊になって聞いてますから。
窓に映るハヤトくんに視線を向けると、慌てるように首を横に振っている。

えーと……まだ、この入れ替わりに関わっている人が居るってことなの?
[ 2007/02/28 22:14 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

分からないフリ 

隼人くんの言葉に、私が言葉を失う。
『私たち以外の誰かが、まだ入れ替わりに関わっているのか?』
確かに――言われてみればそうである。

私がハヤトくんの中に入って。
隼人くんが私の中に入って。
そして――ハヤトくんが押し出されてしまっているが、だとすれば隼人くんの身体はどうなっているのか?
ひょっとすると、さらなる第三者が隼人くんの身体に入っている可能性がある。

でも――と、私は出そうとした言葉をグッと飲み込む。
『大杉隼人くんは、幽霊になってこの場所に一緒に居るの』
飲み込んだのはこの言葉だ。
これを隼人くんに告げると、どういう事になるのか……少しだけ想像が出来たからだ。

私は、私がハヤトくんの中に入ってしまい、ハヤトくんが幽霊として自分の傍に居ると分かった時に――『ひょっとして、自分の身体の中身が空っぽになったのではないか?』と考えた。
中身が空っぽな身体が、無事でいるのか?
そんあ、猛烈なまでの心配に苛まれたのだ。

――隼人くんだって、そうならないとは限らない。

ハヤトくんも、私の考えが読めたのだろう。
賛同するように、ガラスの中で大きく頷いている。

(俺の事は――まだ秘密にしといた方が良いな)

頭の中に、ハヤトくんの声が聞こえた。

ここは、隼人くんの言葉の意味が分からないフリをして、まずは隼人くんがどうしたいのかを探ることにしよう。
そう決めて、隼人くんの次の言葉を待つことにした。
[ 2007/02/28 22:13 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

気持ちも分かるけど 

「――あのさ、俺の身体のトコへ行っても良いか?」

隼人くんがそう切り出した。
それは、とても真っ当な申し出だと思う。
誰だって、自分の身体のことが一番に心配になるだろう。
かく言う私だって、こうやって自分の身体の無事を確認しに来たわけだし。
現状が分かった隼人くんにとっても、自分の身体の無事を確認するということは最優先事項だと思う。

しかし、すぐには返答しかねて……私は黙ってしまう。
私たちにも、目的はあるからだ。
ハヤトくんが口にした、『この入れ替わりの内容が、私のお父さんの小説に似ている』という事。
できれば、少しでも早くお父さんから話を聞きたい。
その為に、こうやって私の身体とコンタクトを取って、お父さんと接触するための窓口を求めた、という事もあるのだ。
隼人くんの気持ちも分かるのだけど――出来れば回り道は後回しにしてしまいたい、というのも本音だった。

(良いんじゃねーの?)

私が返事をしかねて悩んでいると、頭の中にハヤトくんの声が響いた。
ハヤトくんの方を見ると、さらにハヤトくんが言葉を続ける。

(お前が早く中道先生に話を聞きたいってのも分かるけど――コイツの気持ちも分かるしさ)

隼人くんには見えていないだろうけど、ハヤトくんが隼人くんを指差しながらそう言う。
私だって、隼人くんの気持ちは理解できる。
理解できるが――こうして幽霊になってしまっているハヤトくんの事だって心配なのだ。
いつまで無事でいられるのか、そんな保障はどこにも無い。
もしかしたら、時間が経ち過ぎればアウトになってしまうかもしれないではないか。
そんな思いもあり、隼人くんに返事をしかねているというのに……ハヤトくんにそんな事を言われてしまうと、まるで隼人くんの事を後回しにしたいと思っている私だけが悪者みたいになってしまうではなか。

「頼むよ、ここの近所だからさ――」

私が悩んでいると、隼人くんが再びそうやって頼んできた。
[ 2007/02/28 22:12 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

移動開始とカツカレーの関係 

「う、うう……分かったわよ!」

隼人くんの頼みを、完全には納得できないまま承諾する。
本当ならば一刻も早く私のお父さんに会って、事態を少しでも進展させておきたい気持ちなのだが――私の都合ばかり言うのも印象が悪い。
ここは少しだけ折れて、隼人くんの身体の無事も確認しておけば隼人くんだって安心して元の身体に戻る方法を探る作業に集中できるだろう、そう思い直すことにした。

まあ、隼人くんの家も近所だって言っていることだし、隼人くんの身体の無事を確認するのにそれほど時間は掛からないだろう。
これで一番最悪なパターンとしては、隼人くんの家に行ったは良いが、本当にさらなる人が入れ替わりに関わってしまっていて、その人が自分の身体を確認に行って隼人くんの身体の無事が確認できない、そんな事態だろうか。

そんな感じのやり取りをしている間に、私が注文したカツカレーが部屋に届いてしまった
落ち着かない様子の隼人くんと、急がないといけないと言っていたのに、まさか私の都合で隼人くんの身体に会いに行くのが遅れてしまう――そう言いたげな冷めた視線のハヤトくんの表情を若干気にしながらカツカレーを一気に胃の中に流し込む。

普段ならば――元の身体ならば一人前を食べるのに十五分は掛かってしまうのだが、さすがにハヤトくんの身体である。五分と掛からずにカツカレーを食べきる。
うーん、さすがに男の子だね。なんて感心しながらも、私が食べ終わるのを待っていたように立ち上がった隼人くんに続いて立ち上がり、早々にカラオケ屋から出る事になった。

「……えっと、これからどこに行くのかな?」

店を出たところで、隼人くんに問いかける。
隼人くんの家に向かうのは分かっているのだが、それがどこにあるのかは聞いていない。
なるべく遠くではないことを祈るしかないのだが――。
[ 2007/02/28 22:11 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

近所? 

「ああ、近くだから――」

隼人くんの言葉通り、隼人くんの目的地は私の家からさほど離れてはいない場所だった。
これならば、隼人くんの『身体の無事を確認する』という目的さえ果たしてしまえば、私の『お父さんに話を聞きに行く』という目的を達成するのにさほどタイムラグは発生しないだろう、と少しだけ安心した。

位置関係でいえば、私の家から隼人くんと待ち合わせをした公園を挟んで対角線上にある土地。
徒歩でも十数分といったところだろうか。
かなりのご近所さんである。

バス通りを抜けて、住宅街に続く裏道へ入る。
隼人くんは、自分の地元なのだろう。迷いない足取りで目的地である隼人くんの自宅へ向けて進んで行く。
私は私で、隼人くんの後ろをトコトコと着いて行く。
あえて口には出さないが、隼人くんが私を連れて来た場所は――私も知っている土地なのだ

もちろん、近所だから知っているということもあるのだが、何を隠そうこの土地には私のお婆ちゃんが住んでいるのだ。
私の、お父さん方のお婆ちゃんである。
隼人くんに連れて来られたこの近所にあるマンションで一人暮らしをしている。
陶芸家をやっているお祖父ちゃんとは別居状態なのだが、両親曰く『あれでも仲は良いから大丈夫』という、少し理解に苦しむ間柄である。

ああ、そういえばお婆ちゃんの苗字も『中道』である。
まあ、お父さんの苗字が『中道』で、そのお母さんに当たるのだから当然といえば当然なのだが……今まで意識していなかったのだが、この辺りでは『中道』というのは割とありふれた苗字なのかもしれない。
ということは、別に隼人くんの名前がお父さんと被っているのも本当にただの偶然かもしれないな、なんて思えてくる。
私とハヤトくん、それに隼人くんまで巻き込まれている『入れ替わり』現象の犠牲者であり、考えようによっては一番気の毒な人かもしれない。
ここは一つ、せめて身体の無事ぐらいは確認させてあげて、少しは安心させてあげてから元に戻る方法を探すことにしようか――そんな優しい気分になる。

そんなことを考えながら、隼人くんの後に着いて来ていると――。

「ここだ、着いたよ――」

と、見覚えのあるマンションの前で立ち止まる。

「――ここが、俺の家

そう言いながら、スタスタとマンションの中に入って行こうとしている。
私は――かなり驚かされることになってしまった。
なぜならば……ここは、私のお婆ちゃんが住んでいるマンションだったからだ。

――本当に、隼人くんは偶然に巻き込まれてしまったのだろうか?

私の頭の中に、整理しきれない情報から生まれる疑念が渦巻いていた。
[ 2007/02/28 22:10 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

マンション 

私の知っている限りでは――というか、隼人くんが案内してきたこのマンションを私は知っている。
というのも、私のお婆ちゃんがこのマンションで生活していて私は何度もここに訪れたことがあるからだ。
余談になってしまうけど、私の自宅も両親が『このマンションに近い』という理由もあって購入したものだと聞かされたことがあるし、私のお父さんも以前はこのマンションで生活していたらしい。
外観はまだまだ新しいものの、私が生まれるずっと前から建っていたマンション――。

私の中に入ってしまっている隼人くんの自宅も……このマンションの中にあるという。
しかし、私の知っている限りでは――うちのお婆ちゃんの他に『中道』という人は住んでいただろうか?
細くなってしまっている記憶の糸を辿る。

何を隠そう、私は昔からここを遊び場にしていた。
徒歩で行ける範囲に住んでいるお婆ちゃんの家、小さい子供にとっては格好の遊び場だったのだ。
マンションの階段、踊り場、玄関――それに集合ポストのある場所

ポストには部屋番号以外にもその部屋に住んでいる人の名前が掲げられている。
もちろん、全ての人が名前を出している訳でもないけど私が遊んでいた当時はほとんどの人がポストに名前を掲示していた……ような憶えがある。
かつて『郵便屋さんごっこ』をして遊んだ時、一軒一軒のポストの名前を確認しながら葉書を投函するフリをして遊んだのだ。
その中に――私と同じ『中道』という苗字は存在していなかったように記憶している。

いや、確かに昔の事で記憶は曖昧なのだけれど……それでも、幼い頃に自分と同じ苗字を発見したら、意味も無く嬉しくなって記憶しているものなのではないだろうか?
それを憶えていないという事は――私の中にあった疑念が少しずつ輪郭を帯びてきているのを感じる。
[ 2007/02/28 22:09 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

帰結 

私が考えている事に気が付くはずも無く、隼人くんは迷いの無い足取りでマンションのエレベーターホールへと進む。
私も……考えつつ、隼人の後に続く。
とはいえ、実は考えるまでも無いのだ。

――このまま、隼人くんとエレベーターに乗って、隼人くんが『ある階のボタン』を押せば、私の疑念は確信に変わる

そして、その確信は私にとっては信じ難いものなのだ。
でも……幾つもの隼人くんの言動から、結論は一つの道に繋がりつつある
どうして、こうなったのかはまるで分からない。

しかし、私は……私の推論が正しいのであれば――この隼人くんの正体を私は知っている
そう、隼人くんは私もよく知っている人なのだ。
ただ、私の知っているその人と隼人くんには若干の違いがある。
その違いがどこから生じたのかは分からないし、その理由が分かっても私とハヤトくん、そして隼人くんがどうして『入れ替わって』しまったのか、という不可思議な現象の答えにはまるで結びつかない。

と、考えている間に――エレベーターは到着してしまった。
エレベーターの扉が静かに開き、隼人くんは何の迷いも無くその中に乗り込んでしまった。
私も――一瞬だけ迷いが生じ、扉の前に立ち尽くしそうになったのだが、すぐに隼人くんに続く。
隼人くんは私がエレベーターに乗り込む前にエレベーターのパネルを操作している。

既に目的階のボタンを押して、私が乗るのを待つ為に『開』のボタンを押し続けている。
後は――私が目的階が点灯しているであろう操作パネルを見るだけだ。

覚悟を決めてエレベーターに乗り込み……視線を操作パネルに向けた
[ 2007/02/28 22:08 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

正体 

私の目に飛び込んで来たのは、単純に点灯しているエレベータのパネルでは無かった。
『やはりか』という思いと『どうしてだ?』という疑念。それに――少なからぬ混乱である。

エレベーターパネルに表示されている階数は八階、私のお婆ちゃんが住む階である。
この建物はマンションと言っても一階ごとの部屋数はさほど多くはない。
せいぜいが、一つの階に十部屋といったところであろうか。
そして、私が知る限りでは……この階に住んでいる『中道』という苗字の人は――私のお婆ちゃんしか居ない

そう……なのだ。
隼人くんが『自分の家』だと言って案内してきたのは私のお婆ちゃんの家なのだ。

かと言って、隼人くんが私の親戚だとは考えにくい。
私のお父さんは一人っ子だし、ついでに言えばお母さんも一人っ子の為に私にはいとこというものが居ない。
そのおかげで、私は今までお正月にもそれほど多くのお年玉を貰ったことは無いのだ。
親戚が沢山いる子なんかが冬休み明けにお年玉の額を自慢しているのを見て羨ましく思ったものだ――と、話が逸れた。

いや、つまり……私が言いたいのは、隼人くんは『私が思っている人物に間違いない』という事だ。
私と同じ、『中道』という苗字で。
私のお父さんと同じ、『隼人』という名前で。
かつ、私のいとこなどでは無い。

断定するにしてはまだ不可解な言動などもあるのだが――恐らく、私の予想は間違っていない。
隼人くんの正体。
この、奇妙な『入れ替わり』に巻き込まれていただけの人だと思っていた隼人くん。
初対面のはずなのに、何故か微妙に親しみを覚えてしまっていた隼人くん。

今までに見聞きした情報が導く結論。
隼人くんは――私のお父さんだ!
[ 2007/02/28 22:07 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

隼人くん=お父さん≠ハヤトくん 

薄々と感じていた真相がはっきりとした事に驚きを感じる私の心中など隼人くん……いや、お父さんが分かるはずもない。
私が何も言えないままにエレベーターは目的の階に到着してしまい、お父さんは早々にエレベーターから出て行ってしまう。

――目的が決まってると周りのことなんてお構いなしだもんね……。

隼人くんの正体がお父さんであると分かると、これまでの隼人くんの様々な行動にも合点がいく。
主体性が無い性格のように見えて頑固だったり。
直感で動く癖があるのに理屈っぽかったり。
集中すると周りが見えなくなったり――全部、私が幼い頃から見てきたお父さんの行動パターンそのものなのだ。

どういった訳かは分からないのだが、隼人くんは娘である私の事がまるで分かっていない。
しかし、これまでの言動を振り返ってみれば隼人くんは私の父である『中道 隼人』であることは間違いない。
それが自分の中で固まることによって――これまで感じていた違和感の正体もはっきりとした。

お父さんこと隼人くんに感じていた違和感。
それは『長年見知ったような人物に感じる』というものだったのだ。
初対面のはずの、私とハヤトくんの『入れ替わり』に巻き込まれた人。
そう思っていた隼人くんなのに、なぜか動作の端々に慣れ親しんだ感覚があった。
それらが積み重なって私の中で違和感を形成していたのだが――隼人くんの正体はお父さんとなれば当然の事である。
何せ、ずっと、生まれた時から側に居た人なのだから。

「おい、降りないのか?」

エレベーターを降りて、二歩ほど進んだ場所から隼人くんが声を掛けてきた。
私が反応をする前にそのまま振り返って行ってしまいそうである。
この辺りの、相手の反応を待たないのもお父さんならではの行動である。
きっと、このまま私がエレベーターに乗り続けていても、お父さんはそのままお婆ちゃんの家までスタスタと歩いて行ってしまうだろう。

「あ、うん――」

考え事を中断して、エレベーターから降りようとする……と、今度はエレベーターの中にある鏡越しにハヤトくんと視線が合った。

どうかしたのか?

私に怪訝な視線を向けながら、ハヤトくんが聞いてくる。
が、ハヤトくんの質問に答えている間にもお父さんはさっさと歩を進めている。

――えーと、後で教えるから!

心の中で、ハヤトくんにそう答える。
私の中でも、まだ考えが纏まっていないのだ。
色々と説明しているうちにお父さんだけがさっさと目的を果たしてしまいかねない
ハヤトくんの質問を後回しにして、私はエレベーターを降りてお父さんの後を追い掛けた。
[ 2007/02/28 22:06 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

 

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[ 2007/02/01 00:00 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | CM(0)
プロフィール

黒矢 一実

Author:黒矢 一実
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