僕は狂っていく~ぼくるい~

創作小説「僕は狂っていく」まとめブログです。 ジャンルは現代モノです。 基本的に「奇妙な話」です。

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文明の利器の以外な弱点 

隼人くんの鞄から早速……文明の利器を取り出す。

そんで……番号をプッシュ……というのが極めて自然な流れではあるのだけど。

(……どうした?)

う……そんな不審者を見るような目で私を見ないで。
隼人くんが片方の眉を下げて、訝しむという表現がピッタリな目線で私を見ている。
番号をプッシュする段階になって私の動きがピタっと止まってしまったので、隼人くんが私に対して「おかしいな」と思うのは当然だとは思うけど。

――そういえば……私、自分の携帯の番号覚えてなかったり……。

(アホか!!)

だってー!!
仕方ないじゃない!
自分の携帯に電話をかける機会なんてほとんどないし。
誰かに番号を教えるときだってワン切りとか赤外線通信とか便利な機能が盛りだくさんだし。

いや、言い訳してる場合じゃない。
せっかく携帯で自分の身体の無事を確認するというアイデアが出たのに。
このままだとせっかくのナイスアイデアが無為になってしまう。

――うーん、どうしたもんかね?

悩みとも、質問ともつかないような口調で隼人くんに助言を請うてみる。

(番号を覚えてない……か。だったらアドレスは?)

――あ!!それなら覚えてる!!

うん、実に役に立つ相方だ。
[ 2007/02/28 23:23 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

冷ややかな視線 

――maria-17@xxmoweb.ne.jp……っと!

アドレスを入力して、件名、本文を打ち込む。

title:私だけど
本文:無事!?
    ちゃんと生きてる!?


うーん、我ながら意味不明なメールだこと。
でも、これくらいしか書きようがないんだよねー。
ちゃんと返事が来ればとりあえず一安心なんだけど。

いや、一安心というワケにもいかないか。
返事が来るってことは、誰かが私の身体の中に入ってるってことで。
私が入ってる隼人くんの中身がこの場に居るってことは、私の中にはさらに別の人が入ってるってことで……。

――うーん、返事が来ても来なくても安心は出来ないわけ……か。

(まあ、そういうことだよな)

隼人くんが間髪入れずに私の思い浮かんだ心配を肯定する。
え?隼人くんはメールを送ったところでこうなることが分かってたということ?
じゃあ、何故に最初からそう言ってくれないの?

「え? な、何か知ってるの!?」

思わず口に出てしまったような気がする。
その証拠と言わんばかりに、電車内の数少ない乗客の皆様の視線が心なしかコチラに向いているような気がする。
うん、周囲に誰も居ないのにいきなり空中に向かって話しかけるのは……春先に多く出現するような方々くらいなもんだよね。

咄嗟に誤魔化すために、手に持った携帯電話を耳に押し当ててみた。
夢の世界に行ってしまっている人に見られるよりは、車内で携帯を使う非常識な人に見られた方が幾分かマシなような気がしたからだ。

そんな私を、またも冷ややかな目で見ながら隼人くんが一言。

(……ちょっと頭を働かせれば分かることだろうが)

う……。
冷たい視線の連発はさすがに心に堪えます。
[ 2007/02/28 23:22 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

名前 

隼人くんは黙ったまま私をじっと見ているし、私は思わず声を出して叫んでしまったのが恥ずかしくて何も言えなくなってしまってるし。
時間にして僅かなものだけど、ついにはいたたまれなくなって俯いてみた

確かにメールを送ってみるまで何も気が付かなかった自分も多少は鈍いとは思う。
でも……もう少し隼人くんも協力的になってくれても良いじゃない。

そんな恨み言にも似たような感情を抱く。
すると、突然だ――。

(お前の名前……『まりあ』っていうのか?)

隼人くんが聞いてきた。
あれ?
言ってなかったっけ?

コクンと頷いてみる。
そういえば……朝からひたすらバタバタしていて自己紹介すらしていなかったような気がする
隼人くんはアゴに手を当ててこちらを見ている。

(ふむ、『女かな?』とは思ってたが……やっぱり女だったのか)

え?
何?その微妙に失礼な言い回しは
かなり引っかかるものを感じるけど、この機会に自己紹介はしておくべきかな?

元に戻る方法について、何かヒントになるかも知れないし。
[ 2007/02/28 23:21 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

今さらですが自己紹介 

――うん、まりあ。中道 真里愛だよ。

私が隼人くんの名前を知ってしまっていたから、既に自己紹介をした気になってしまっていたが……。
まあ、細かいことは気にしてはいけない。
少し遅くなってしまったがこれで自己紹介は済ませたぞ!

(中道……真里愛、ね)

隼人くんは自分の頬をポリポリと人差し指で掻いている。
視線は私の方ではなく、電車の天井部分に――何か引っかかるものがあるような仕草だ。

――ん?どうかしたの?

何か引っかかりがある様子。
気になるのでストレートに質問をぶつけてみる。

(いや、珍しい苗字だよな)

ああ、そうかな?
生まれてこの方、ずっとこの『中道』という苗字で育ってきているのでそんなに珍しいとは思ってない。
確かに同じ苗字の人が学校に居たこともないし、同じ苗字の芸能人でさえ見たことはない。

いや、でも有名人……と、言えるかどうかは分からないけど、世間に名前が出てる人も居る。
作家をしている私のお父さんだ。

名前が『中道 隼人』でペンネームもそのまま。本名で活動している。
メチャクチャ有名ではないと思うけど、そこまでマイナーでもない……はず。

だから、そこまで珍しい苗字だとは思わないんだけどな。
[ 2007/02/28 23:20 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

同じ名前 

お父さんのことを思い出して、そういえば隼人くんの名前とお父さんの名前は同じだな……と、今さらながらに気が付いた。

人の名前なんて、しかも下の名前なんてものは同じなんてことはよくある話だから、こんな『他人と身体が入れ替わる』なんて超常現象を体験している現在では名前のことなんて珍しくも何とも感じないわけで。

これはちょっとした話の接ぎ穂になるかな、なんて。
少しでもお互いの情報を共有すれば、元に戻る方法を探るときに役に立つかもしれないし。

――あのね、私のお父さんの名前も『隼人』なんだよ。

(え? そうなの!?)

んん?
何だか思いのほか食いついてきた
同名なのがそんなに興味をそそったのかな?

――うん、『中道 隼人』っていうの。字も同じで隼に人で『はやと』、作家さんなんだよ。

正直、けっこう自慢のお父さんだ。
普段はクールな感じなんだけど、本当はとても優しい。
人前だとかなりツンな性格だけど、家族だけの時だとデレに変わる。
見た目もかなり格好良いし、小学校の時の父兄参観のときなんかはかなり優越感に浸らせてもらったものだ。

残念な事といえば……私はかなりお母さんに似てるというところだろうか。
チビだし、眼鏡だし、三つ網みお下げだし……貧乳だし。
[ 2007/02/28 23:19 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

親近感 

(作家……作家って、『人形使いは闇に踊る』の中道さんか!?)

何だか興奮気味に隼人くんが聞いてくる。
『人形使いは闇に踊る』は確かにお父さんの作品だ
隼人くんの思いもよらぬ興奮度合いにちょっと引いてしまいそうになるが、それでもお父さんのおとが知られていると分かるとちょっと嬉しかったりする。

口には出さずに、コクンと小さく頷いて隼人くんに肯定の意を示す。

(マジか!? スゲエ! サイン貰っても良いかな!?)

いや、また興奮レベルが上がっている。
というか、こんなにお父さんのことを聞いて興奮する人は初めて見た。

確かにお父さんはそんなにマイナー作家ではない。
大学生の頃から作家として活動してたそうだし、賞も何個か貰っている。
そこそこのヒット作も出してるし、ファンが居ても不思議ではない
でも……ここまで興奮しないといけないものなの?

――は、隼人くん、落ち着いて!

まずは興奮しきっている隼人くんを落ち着かせるのが先決だ。
目をキラキラさせて、息も興奮で荒くなっている隼人くんをなだめる。
隼人くんって、興奮するとこんな感じなのか……。

クールを装っていながらも少し興奮すると素の部分が出る辺り……何だかお父さんに似ている
名前といい、性格といい、お父さんのファンなところといい。

なんだか……とても親近感が沸いてくる
[ 2007/02/28 23:18 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

天然さん 

(あのさ、俺さ、子供の頃から中道さんのファンで――)

こちらからの返答を待つこともなく、隼人くんは先ほどから興奮したままでどれほど隼人くんが私のお父さんのファンであるかを語る。

(ウチに中道さんの本も全部揃ってるし、ずっと憧れてるんだよ!)

お父さんのファンであることは嬉しいし、娘としては本当にありがたい存在だと思う。

(まさか同じ市内に住んでるなんてな! 本当にスゴイよな!)

だが、出来ればこんな状況でない時にそういう話はして欲しいわけで――。
お父さんの話ばかりしていたら、本筋である『元に戻る方法』を探れないじゃないか!

――隼人くん!

心の中で、ちょっと強い口調で呼びかける。
このままだと電車が駅に着くまで、ずっとお父さんの話を続けてしまわれそうだし。
そうなってしまうと本当に話が全然進展しない。

これだけの異常事態に直面しているというのに、全くもって話が進展しないというのは非常に精神衛生上悪い。
ぶっちゃけて言えばイライラする

(ん? 何だ?)

私の強い口調に、キョトンとした表情で隼人くんが答えてくる。
まるで『一体どうしたんだ?』と言いたげな様子。

この人……自分が幽霊になっていることを忘れているんじゃないだろうか?

この天然ボケが入った感じ……本当にお父さんを思い起こさせる。
[ 2007/02/28 23:17 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

着信あり 

――あのね、今は私のお父さんのことよりも、私たちが元に戻る方法を考えなきゃ。

回りくどい方法はとらず、流れを本筋に戻すために本題をストレートに口にする。
いや、お父さんのことを話題に出して、流れをズラしてしまったのは私なんだけどね。
まさか隼人くんがここまで食いついてきて、大幅に話が脱線するとは思っていなかった。

(――お、おお。そうだよな)

私の言葉に、ようやく隼人くんの興奮も収まったようだ。
これで話も本筋に戻せる。

とは言っても、話し合ったところで解決策が出るとは思えないんだけどね

それでも私のお父さんの話を延々と続けるよりは生産的だと思う。
何の足しになるかは分からないけど、話さないよりは遥かにマシだ。
少しでも、ほんの少しでも良いから元に戻るヒントを……。

ブゥーン……ブゥーン……ブゥーン

何の話を切り出すかを考えていたその時だ――。
鞄の中から電車の振動音とは違う、細かい振動音が体に伝わってきた。
慌てて携帯を鞄の中から取り出す。

メールの着信を知らせるマークが携帯のディスプレイに表示されている。
隼人くんの顔を見る。
こちらを見ながら、コクンと小さく頷き『メールを開け』という意思表示を見せる。

メールの差出人は――私の携帯からだった!
[ 2007/02/28 23:16 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

誰? 

私の携帯からの着信……ということは、私の身体の中には誰かいるということか?

もし、私の身体が先ほどまで懸念していたように『空っぽ』だったとしよう。
だとすれば、私の携帯を誰かが触ることはないはず
いかに私の身体が空っぽだとはいえ、お母さんが寝ている私の携帯を勝手に触るとは思えない。
第一、身体の中に魂が入っているかどうかなんて外見から判断なんて不可能なのだから、他の人から見れば空っぽになっている私の身体は眠っているようにしか見えないのではないだろうか

だが、こうして私の携帯から隼人くんの携帯にメールが届いた。
これの意味するところは……私の身体の中には誰かが居て、私が先ほど隼人くんの携帯から送ったメールを確認した。
そして、そのメールに返信をしてきた、ということだ。

一体……誰が?

こうして私が隼人くんの身体の中に入ってしまっているのだ、常識的に考えれば私の身体の中に居るのは隼人くん……のはずなのだが。
隼人くんの魂は現在、こうして私の隣に居る。
だとすれば、私の身体を使っているのは――隼人くんではない。

幾つかの疑念を感じながら、携帯に届いたメールを開いてみることにした。

差出人:maria-17@xxmoweb.ne.jp
題名:Re:私だけど
本文:無事って、一体誰だ?

    
え?
あれれ?
逆に、誰かと聞かれてしまった。

差出人は私の携帯だし、送ったのは私だし。
確かに送った文面が悪かったのかもしれないけど……私の携帯を使ってるアナタこそ誰なの!?
[ 2007/02/28 23:15 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

多少の希望 

いったん携帯から目を離し、一緒に携帯を覗き込んでいた隼人くんと顔を見合わせる。
顎に手を当てて、首を捻り疑問の表情を浮かべる隼人くん。
やはり……隼人くんもこの状況に疑念を感じているようだ。

(お前の魂はここにあって、俺の身体を使ってて――)

うんうん、そうだよね。

(――俺の意識はここにあって……だよな)

隼人くんも私と同じ結論に達したようだ。
やはり……私たち以外の第三者がこのおかしな状況に巻き込まれている!?
そして、その人物が私の身体を使って私の携帯からメールを返信してきた。

だからこそ、『一体誰だ?』になるのではないだろうか。
その人物も、いきなり『身体が入れ替わる』という常識では考えられない事態になり、慌てているところに携帯が鳴った。
少しでも現状を把握するヒントがあるかもしれないという期待を込めたところに私からのメールだ。
藁にもすがるような思いで返信をしてきたのではないか?

――とにかく……もう一度メールしてみよう!

(う、うん。そうだな)

私にとっては、多少の疑問は残るが少しは良い報せでもあった。
何といっても、自分の身体はちゃんと生きているという可能性が高くなったのだ。
中に入っているのが誰か、という不安は残るものの、これで元の身体に戻れる希望がちゃんと沸いてきた。

――でも、本当に私の身体に入っているのはなんだろう?
[ 2007/02/28 23:14 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

苦労知らず 

宛先:maria-17@xxmoweb.ne.jp
題名:真里愛です
本文:私はその携帯の持ち主です。
    私の携帯を使ってるあなたは一体誰なの?


手短に、こちらの知りたいことをメールに書く。
きっと私の身体の中に入っている『誰か』は私と同じで混乱の極みにあるのではないかと思う。
なので、ヘンに長いメールを送っても返信するのに書くことを迷ってしまう可能性が高いのではないだろうか。
その辺りを考慮して――現在はとりあえず相手が誰なのかだけを確認。

――メール送信……っと。

送信ボタンを押して、メールが送信されるのを見届ける。
その様子を見守っていた隼人くんに視線を向け、不安を紛らわすために隼人くんでも答えが分からないであろう質問をしてみる。

――これ……誰なんだろうね?

隼人くんは……幽霊なのに壁にもたれかかるような姿勢をしてみせた。
小さく「ふうっ」と息を一つ吐き出した後、私の質問に対する答えを返す。

(誰か……は分からないけどな。これで少しはやりやすくなったんじゃないか?)

「やりやすく」、この言葉の意図が掴めず、表情で隼人くんに対して疑問を述べてみる。
何が……やりやすくなったのか?

(これで、顔を合わせるのに苦労はしないだろ?)

ん?どういうこと?
私の中に誰か入ってて、そしたら『顔を合わせやすくなる』とは?

頭が上手く回っていないのか、どうしたらそういう結論になるのかが分かっていない。
とりあえず、これから私の中に入っているのが誰か、ということを探って。
それが分かれば、どうやってその人に会いに行くか、の順番じゃないのかな?

どうしても分からなくて小首を傾げてみる。

(あのな……これでメールで外に呼び出すことが出来るようになったんじゃないのか?)

――あっ!そうか!
[ 2007/02/28 23:13 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

望む、望まざる 

なかなかに重要なことだよね。
何せ、どうやって自分の身体と対面するか。
これが当面の障害だったわけで、それが一気に解決するのだから。

――そっか、メールで呼び出すことが出来るんだよね!

と、これからの行動に光明が見えたところでタイムアップ
電車は目的地である駅に着いた。
私が住んでいる所、光が丘だ。

ここに来れば、さっきみたいに迷うことは無い。
何せ小学校に入る頃からこの土地に住んでいるのだ、迷えと言う方が難しい。

携帯がいつ鳴っても対応できるように、片手に携帯を持ったままで移動を始める。
電車の窓のような反射するような物が何も無いので、隼人くんと相談しながら移動ということが出来ないのが心細いことではあるけど……贅沢は言っていられない。

私の家まで、ここからバスで十五分程度の移動がある。
そのバスの中で隼人くんと会話することも可能なわけだし。
ここからバスターミナルまで移動して、それからバスに乗り込むまでの時間。
私が考えることが隼人くんに一方通行で伝わるだけ、という事になる。

というワケで、私の身体を使っている人から早くメールが来て欲しいような、でも隼人くんと相談しながら行動できるまでは来て欲しくないような――複雑な心持ちなのは確かだ

駅の改札を抜けて、そのまま真っ直ぐ進む。
改札をずっと先に進むと、この市内で一番大きな百貨店がある。
その百貨店と改札のちょうど中間点にエスカレーターがあり、それを下ればバスターミナルの場所に繋がる歩道に出る。

歩き慣れた道を進み、もう少しでバスターミナルに着く――と、いった所で。
望んでいたような、望んでいなかったようなモノが来た。

片手に握った携帯から伝わってくる振動……メールが来た!
[ 2007/02/28 23:12 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

不安 

出来れば……隼人くんと相談しながら見れるようになるまでは到着して欲しくなかったメール。
でも、そんな事は言っていられない。
来てしまったからには――開くべきだよね?

一人で見るわけではない。
今は姿を確認することは出来ないけど、きっと隼人くんは隣に居る
そして、このメールを開けば隣から覗き見るはず……だ。

果たして、私の中に入ってしまっているのは……誰なのか?
きっと、その答えがこのメールの中にある。
その答えが、果たして私の知る人物なのか
それとも、まるっきり関係の無い第三者なのか。

たかがメールを開く、それだけの行為を実行するまでに……ここまでの不安が襲ってくるとは
先刻までは隼人くんが見える形で隣に居た。
だから、万が一でも私が何かの拍子で混乱してしまっても――隼人くんが落ち着かせてくれる、という安心感があった。

もし、このメールを開いて出る答えが……私を混乱に突き落とすようなものであったら。
隼人くんの姿が見えない、声も聞こえないような状況で、果たして私は平静を保っていることが出来るのだろうか?

携帯を持つ手が……カタカタと震えてしまっているのが自分でも分かった。
[ 2007/02/28 23:11 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

順番 

事態がさらに混乱するのではないか、という不安と少しは良い方に向かうかもしれないという期待。
相反する二つの感情の間で――私の気持ちは瞬間的に揺れ動いていた。

勿論、このメールは絶対に開かないといけない
どのような状況を巻き起こそうとも、このメールを見ないことには事態は何も進展しないのだ。
私は隼人くんの身体を乗っ取ってしまっていて、私の身体もまた誰かに乗っ取られている。

その、私の身体を使うことになっている誰か――それは知らないといけない事なのだから。

だって、順番を考えてみたのだ。
この事態を収束させるために必要な順番だ。

私は元の身体に戻りたい。
隼人くんだって同じだろう。
そして、私の身体の中に入ってしまった誰かも……元に戻りたいと思っているに違いない。
とすれば、だ。
元に戻る方法というのは分からないが、しないといけない事は決まっている。

私に入っている人を、その人の元の身体に戻し。
私の元の身体に私が戻る。
そうして隼人くんにこの身体を返し――これでやっと一件落着だろう。

そのために、私の身体に入っているのが誰なのかを確かめないといけない。
でなければ、どうやってその人を元の身体に戻すか、という段階が終わらないのだから。

――一刻も早く、元の身体に戻りたい

それが私の偽らざる気持ちだ。

不安に負けている場合ではないのだ……。
震える手を押さえつつ、私は携帯に着信したメールを開いた
[ 2007/02/28 23:10 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

混乱 

やっとのことで、決意した私を待ち受けていたのは……やはり混乱だった

やっぱり……隼人くんと一緒にメールを開くべきだったんだろうか?
きっと隼人くんも、このメールを見て混乱しているのではないだろうか。
これは……一体……どういうことなの!?

差出人:maria-17@xxmoweb.ne.jp
題名:Re:真里愛です
本文:真里愛って?
    俺は隼人だ。
    一体、何がどうなってるのか?
    知ってることがあるなら教えてくれ。
    どうして俺は女の体になってるんだ?


ちょっと……待ってよ!?
隼人?隼人くん?
隼人くんの霊はここに居るのに、このメールを送ってきているのも隼人くん?

いや、元からワケの分からない現象が起こっている。
でも、でも……計算が合わない。
私の身体の中に隼人くんが入っているとして、ではここに居る隼人くんは何なの?
ここに居る隼人くんが本物の隼人くんの霊として、私の中に入っている隼人くんは何者なの?

隼人くんが二人いる?

何がどうなっているの?
[ 2007/02/28 23:09 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

幻覚 

待っているときほど時間の経過は遅く。
バスはなかなか来ない
時刻表を見る限りでは、バスは後十分ほどで到着するはずなのに……。
時計を何度見たところで時間が全く進まない。

いきなり降って湧いたようなこの展開……私一人で考えるには難解すぎる!

私の携帯から返信されてきたメール。
そこに書かれてあったこと。

俺は隼人だ

何がどうなって……?
やはり、隼人くんは私と入れ替わってしまっているのか。
だとすれば、私が見ていた隼人くんの霊は一体?
幻覚?
助けを求める私の意識が勝手に隼人くんの霊を作り出していたのだろうか

どれだけ冷静になろうとしてみても、理解の範疇を超えすぎて考えがまとまらない。
いや、まとめようとしたところで情報がてんでバラバラでまとめようが無い。

このメール、どうやって返事をすれば良いのだ?
電車の中で隼人くんと話していた通りに、このメールの主を呼び出すか。
それとも、相手がちゃんと分かるまで様子を窺ってみた方が良いのだろうか?

こんな時こそ……隼人くんの助言が欲しい!

バスが来たら、真っ先に乗り込もう。
きっと隼人くんと窓越しに相談できるはずだ。

隼人くんは、このメールを見て、どう考えているのか。
一人ではどうすれば良いか分からないくらいに混乱しているが、隼人くんと二人ならば……何かの光明が見えるのではないか。

でも……もし、本当に隼人くんが……私の作り出した幻覚だとしたらどうしよう

一抹の不安が私を襲っていた
[ 2007/02/28 23:08 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

疑惑 

不安のために、次に送るメールの文面すら思いつかないまま時間は過ぎた。

もっと正確に言えば、メールを受け取った時点から私の思考は停止状態にある。
メールの相手が隼人くん。
私の傍にいるのも隼人くん。


――どっちが本物なの?

隼人くんが見えるような窓や鏡があれば、きっと『俺は本物だ!』くらいのことを叫んでくれて。
きっと、その叫び声で私は落ち着きを取り戻して。
二人で真偽を確かめるためのメールの内容を考えて。

でも……どうしたら良い?

きっと、バスが着いて、その中にある窓に隼人くんの姿が映るだろう。
でも、もしかしたら……その隼人くんは私の作り出した幻覚かもしれない。
幻覚の隼人くんは私自身が望む答えを言っているだけで――。

考え出すとキリが無い。
一刻も早く、バスが来てくれないだろうか。

窓に映る隼人くんが……幻覚でも構わない!
せめて今は冷静に考えるための支えが欲しい
[ 2007/02/28 23:07 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

安心の源 

もう、ずっとバスは来ないんじゃないか。
そう思えるほど長い時間の後、やっとバスは到着した。
チラっと見た時計では……バスは時間通りに到着していた。

光が丘 日出台行き』のバスに乗り込む。
あれだけ待っていたはずなのに……バスに乗り込んでしまうのが怖い。
このバスに乗って、座席に着いたら――。

――私の傍に居る隼人くんが本物か偽者かが分かってしまう。

それが何よりも怖いのだ。
この隼人くんが、私の生み出した幻覚だったとしたら。
……私は一人でこの難問に立ち向かわなくてはならなくなる。

今さら……今さら一人でなんて立ち向かえない。
いかに幽霊であろうとも、隼人くんが傍に居る心強さを知ってしまった。
私が混乱に陥っても、必ず冷静にさせてくれた。
不安な状況も、隼人くんが居れば心のどこかに安心感があった。

それが――無くなってしまうなんて

不安に歩みが遅くなりながら、バスの後部から乗り込んだ私は運転席の方に向かって行く。
運転席の背後、一人掛けの椅子が空いている。
窓に向かっていれば、誰からも隼人くんと会話していることは悟られないだろう。

……隼人くんが、本物でありますように。

一縷の望みを込めて、私は……座席にそっと腰を下ろした。
[ 2007/02/28 23:06 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

安心するんだろ? 

座席に着いた瞬間、目をギュっと瞑ってしまった
まだ……怖いのだ。
隼人くんをマトモに見れない。

早く隼人くんに相談したい、でも……隼人くんが幻覚かもしれないと思うと、隼人くんと顔を合わすのが怖い。

その矛盾した思いが、私に目を閉じさせていまった。

でも、本当はこんなことで時間を消費している場合ではない。
早く隼人くんと相談して……少しでも早く、次の行動に移らないといけない。
勇気を出して、目を開けないと!

強く閉じた目を、ゆっくりと開けていく。
じわっと瞳に光が入り込み、少しずつ景色が見えてくる。

ややぼやけた景色が輪郭を取り戻していく――。
私の目の前には、バスの窓があり、外の景色が見える。
まだ停車しているバスの外には駅前を歩く人の流れが見えて、タクシーの客待ちの行列が見えた。
少し焦点をずらすと、窓に映る私の姿が見えて、その背後に――隼人くんの姿が見えた

どうした? 眩しかったのか?)

私を心配そうに見ている。
隼人くんの言葉に、小さく首を横に振る。
俯いてしまうと、隼人くんの声が聞こえなくなるので……顔は上げたまま。

何でだろう、あれだけあった不安が。
隼人くんの姿を見た途端に減ってしまっているのが分かる。

どうして、どうして隼人くんの声を聞いただけで……こんなに安心するんだろう……?
[ 2007/02/28 23:05 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

誰なんだろうな 

こうして気分が安定しているうちに――。

そう思った私は、まだ心配そうな顔して私を見ている隼人くんに携帯をツッと差し出した。
ディスプレイには、先ほどのメールを表示してある。
私が送って……隼人と名乗る人から来た返信メール。

(これか……誰なんだろうな?)

隼人くんが率直に自分の思いを返してくる。
やはり、隼人くんにも理解できないような出来事のようだ。

私が知っている『隼人』は二人。
私のお父さんと、私の隣に居る隼人くん。

私と隼人くんが『入れ替わって』いると考えれば、このメールを送ってきた隼人くんは……この身体の持ち主の隼人くんと考えるのが妥当だろう。
いくら名前が同じだからといって、私のお父さんが私の名前が入ったメールに『誰だ?』と返信してくるとは考えにくい。

でも、そうだとすれば……ここに居る隼人くんは何者だ?ということになる。

――本物……だよね?

思わず、いや、思ってしまったから漏れたのだが。
心の中でそう呟いてしまった。

(あ? 俺が本物じゃなかったら……俺は何者なんだよ!?)

語気も荒く、隼人くんはそう答える。

本物であって欲しい、でも私がそう思えば思うほど、隼人くんは私が言って欲しいセリフを言っているのではないかという疑惑が私の頭を駆け巡る。
[ 2007/02/28 23:04 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

キミ、幻覚じゃないよね? 

隼人くんの言葉に、返す適当な言葉が見つからない。
いや、一つ思い浮かんでいることはあるのだ。
ただ、明確な思考にすることは避けていた

ここにいる隼人くんは、ひょっとして助けを求める私が生み出した『幻覚』ではないか、と。

それを私が認めてしまえば、もしも本当に幻覚ならば……この目の前にいる隼人くんが消えてしまうのでは、そんな恐怖があったのだ。
しかし、うかつにも考えてしまった『本物……だよね?』。
これを隼人くんに聞かれてしまった。
この先へ進むためには……もう、目の前にいる隼人くん本人に私の疑問をぶつけるしかない。
それが……ひょっとしたら……隼人くんと離れてしまうことになるとしても

何も考えずに、メールをしている隼人くんをニセモノと決め付けてしまうことも可能だったはず。
でも、メールを見た瞬間に私の中に生まれた疑問。
それを看過することが出来なかった。
なぜならば、私の目の前に居る隼人くんが、私の生み出した幻覚だったとすれば――。
元の身体に戻るための『障害』に過ぎなくなるからだ。

私にとって都合の良いことだけを言う幻。
その言う通りに行動したところで、元に戻るという目的に近付けるはずもない。
ならば、ここで隼人くんが本物か否かを確かめることは、これからの私にとっては重要な意味がある。

本物ならば、これまで通りに二人で元に戻る方法を探っていく。
幻ならば……私はこれから元に戻る方法を一から探り直さないといけない。

幽霊になっていても、全然焦らない隼人くん。
鏡の中にだけその姿を現し、姿が見える時だけ声が聞こえる隼人くん。
私が混乱すると、必ず冷静に引き戻してくれる隼人くん。

私の……理想の彼氏像に……極めて近い隼人くん。

疑おうと思うと、いくらでも疑える要素が増えていく。
このまま、疑いばかりが増えて、隼人くんを信用できなくなってしまう前に――。

――隼人くん、君さ幻覚とかじゃないよね?
[ 2007/02/28 23:03 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

質問の答えは? 

私の質問に返ってきたのは……思った以上に冷たい視線。
呆れたような、怒ったような、複雑な表情で隼人くんがコッチを見ている。

(……どういう意味だ?)

一瞬の沈黙の後、隼人くんがポツリと呟いた。
口調には、明らかに怒りがこもっている。
これは……ちょっと予想外だった。

もし、隼人くんが本物なら、もっと軽快な感じで「本物に決まってるだろ!」と軽いお叱り程度の返しが来ると思っていたのだ。
もし、私が生み出した幻覚なのだとすれば、真実を知りたがっている私の質問に……肯定の意思を示して消えていくのではないだろうか

しかし、隼人くんから返ってきたのは、そのどちらとも違う。
肯定でも否定でもない、私の質問の意図を問いただすような言葉。
私が疑っていることを怒るということは、本物なのだろうか?
それとも、こう言ったら怒るのではないか、という私の無意識の生み出した幻の隼人くんの反応なのか?

判別ができない。そして、隼人くんにどう返答すれば良いのか、それも分からない。
隼人くんが本物であって欲しいから、この質問をしたはずなのに。
どうして隼人くんは怒っているのだろう?
本物だから?幻だから?
それさえも、私の混乱を深めていくように感じる。

この質問をするのが怖い。
認めてしまうと、隼人くんが居なくなってしまうようで。
でも、先に進むためには――。

――私が生み出した……幻覚とかじゃ……ないよね?

この疑問がもし正しければ……きっと隼人くんは私の目の前から消えてしまう
[ 2007/02/28 23:02 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

メールという証拠 

(幻覚? 何だよ、さっきから『幻覚』だの、『本物』だのと!)

隼人くんの反応は、『怒っているような』から『怒っている』に変化した。
私の予想でも、この質問をぶつければ隼人くんは怒り出すだろうと――やっぱり、隼人くんは私が生み出した幻覚なのか?
だったら、隼人くんはこのまま……消えてしまう

(『やっぱり』とか何を言ってるんだ? お前に生んでもらった覚えもねーよ!)

隼人くんの怒りは最高潮のようだ。
幽霊なのに、顔が真っ赤になっている。
こんな非常識な状態で、常識的にというのは間違っているとは分かっている。
でも、常識で考えれば霊の顔が赤くなるなんて……ありえない!

大体、血が通う肉体を持たないから幽霊でしょ?
なのに、何で顔が赤くなるのよ?
私の予想通りの反応をすることといい、あからさまにおかしい!

――だって、メールの相手も隼人くんじゃない!だったら何でここに隼人くんが居るのよ!

決定的ともいえる証拠をぶつける。
これで……隼人くんとも……お別れだ。
もはや、このメールという証拠を出してしまえば……幻覚は出ていられないだろう。

(メール……メールか)

思った通りだ……。
メールという言葉を聞いて、今まで怒って顔を赤くしていた隼人くんが急に冷静になった。
振り上げていた拳を下げ、顔を俯かせてしまう。

やっぱり……この隼人くんは幻覚だったのか。
私が心の平静を保つために、自分の都合の良いことを言わすために生み出した――幻。
これで……私は一人で元に戻る方法を探さなければいけなくなるのかな
[ 2007/02/28 23:01 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

主張 

どういう形で、この隼人くんとお別れになるのか……。
固唾を呑んで見守る。
ほんの僅かな時間とはいえ、私を助けてくれた幻覚の隼人くん――。

――お別れしたくはなかったな……。

思った瞬間、スッと隼人くんが顔を上げた。
口を横一文字にキュッと結んで、何かを決意したような表情だ。

その様子を見守る私。
きっと……私に別れの言葉でも告げるのだろう。
もう、何もかける言葉が見当たらない。
せめて……このまま消えていく最期の瞬間まで、ずっと隼人くんを見続けていよう。
そう思う。

隼人くんは、きっと自分が幻覚だということを認め、私がそのことに気が付いてしまったことでスゥーっと消えて……。

あれ?
スゥーっと……スゥーっと……スゥーっと……あれれ?

………………消えないね?

押し黙ったままなんだけど、一向に消えそうな様子が無い。
幽霊だから、姿は薄いままなんだけど。
相変わらずの濃度を保ったまま、私の目の前に存在し続けている。

意外としぶとい、というべきなのかな?
様子がおかしいな?私の予想だと……このまま消えるはずだったんだけど。

――だからね、アナタは私の生み出した幻覚で。メールの相手が本物の隼人くんでしょ

ダメ押しをしてみる。
そりゃあ、隼人くんが消えないでいてくれれば嬉しいんだけど。
それでは私に進歩が無い。
幻覚に頼っているようでは元の身体に戻ることがおぼつかな……って、隼人くんが口を開いた!

(だから、どうした! 俺は本物の隼人だ!!)

って、おいっ!!
この期に及んで本物ってことを主張かよ!?

[ 2007/02/28 23:00 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

アピール 

――え!? いや、だからさ。本物はこのメールの人で、っていうとはアナタは……でしょ?

未だに『本物』というアピールを続ける幻覚に反論。
リアルに幻覚を見る人の行動というのはこんなものなのだろうか?
自分の脳が作り出したモノのはずなのに、それに反論されて、さらにそれに反論。
もはや……何がなんだか。

(だから! メールがどうした!? 俺以外にも隼人なんて名前はいる!)

うーん、それもそうなんだけど……。
実際に私のお父さんの名前だって『隼人』なわけだし。
ありふれているわけでも無いだろうけど、そこまで珍しい名前でもないだろう

でも、私が『入れ替わった』人の名前が隼人で。
空っぽになった私の身体の中に入ってきたのが、これまた『隼人』。
偶然ではありえないでしょ。

お父さんの名前が『隼人』だってよしみで隼人くんの中に入ったの?
まるっきりアカの他人なわけで。それはあり得ないでしょ?

――それでも! どうしてメールの名前が隼人って名乗るのよ!?

とりあえずダメ押しだ。
メールという動かぬ証拠がある限り、この隼人くんが本物だとは言い難い。
本物であれば良かった、という思いはあるものの……こればかりは仕方ないところだ。

(うっ……!)

ほら、もう観念して欲しいものだ。
ここで幻覚と押し問答をやったところで、事態は何も進展しないのだから。
こんなやり取りは早く切り上げて、これからの事を考えたいのだ。

私の中に入っているのが隼人くん本人ならば、これからどうやって隼人くんを呼び出すか。
呼び出すとして、自分でもよく理解できないこの状態をどうやって隼人くんに説明したものか。
互いに納得がいったとして、どうやって元に戻ったものか。

問題は山積み――幻覚に関わっているヒマは無い。
[ 2007/02/28 22:59 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

どうやったら信じる!? 

――ほら、早く自分を幻覚と認めちゃいなさいよ。

何だか可哀想になってきたが、それでも消えてくれないので仕方なく引導を渡す
ここまでハッキリ言えば、いかにしぶとい幻覚でも消えてくれるだろう。

と、思ったんだけど。
それでも消える気配がまるで無い。
この幻覚、とても頑固だ。

(だーかーらっ! 俺は本物なんだって! どうやったら信じるんだ!?)

うーん、この期に及んで。
アナタこそ、どうやったら自分を幻覚だと意識してくれるのか。
大体だ、この世に霊なんて存在するはずがない!

入れ替わり』にしたって十分に非常識。
そんなもの、お話の世界でしか見たことも聞いたこともない。
お父さんの小説の中で入れ替わる小説も読んだことはある

それも、ある日突然に女の子の身体が見ず知らずの他人と入れ替わり、元に戻るまでにドタバタを繰り広げるようなモノだった。
現在の私に起きているのとそう大差は無い。
もっとしっかり読んで内容を覚えておけば良かった、少しは参考になったかもしれないのに。

あの小説……結末はどうったのか?
最後には元に戻れていたのだろうか?
身内が書いた小説だから、適当に読んでしまっていて……タイトルも結末も思い出せない

――あ、そうだ!!

隼人くんが幻覚か、本物かの区別をつける方法があるじゃないか!
私が分かってないことを質問してみればいい
そうすれば、ここに居る隼人くんが本物だと分かるんじゃないだろうか?

丁度、隼人くんはお父さんのファンだと言っていた。
私が生み出した幻覚だから、そう言うのは当たり前かも知れないけど。
私が忘れてしまっている『入れ替わりモノ』の小説のタイトル。
これを言えるならば、お父さんのファンだし本物で、私が生み出した幻覚なら答えられないはず
[ 2007/02/28 22:58 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

『ちぇんじ』 

――隼人くんってさ、私のお父さんのファンなんだよね?

とりあえず、前提から確認する。
お父さんの名前を聞くだけでテンションが上がるような人だ。
ここで否定はしないだろうけど。

(――ん? それがどうかしたか?)

幻覚のクセに、まだ怒っているのか。
かなりぶっきらぼうな調子で答える。

ちょっとムカつくけど、とりあえず質問を続ける。
これが答えられなければ、アナタは偽者確定なんだから早く消えるのよ?

――教えて欲しいことがあるんだけどさ、お父さんの『入れ替わりモノ』小説ってあったよね?

(うん? 確かにあったな)

『入れ替わりモノ』小説の存在を知っているのは当然
そこまでは私も覚えているのだから。
ここからが問題だ、その作品のタイトル。私が覚えていないことを……この幻覚の隼人くんは答えられるのか!?

――じゃあさ、その作品のタイトルは?

さあ!偽者じゃないと言い張るのならば早く答えてみなさい!
言えないというならば、早く私の前から姿を消して!
……でなければ私は前へ進めない

(『ちぇんじ』だろ?)

――……え!?

なんか、そんなタイトルだったような気もする。
いや、どうだったかな?
でも、そんなタイトルだったような……?
[ 2007/02/28 22:57 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

ま、まだ本物とは認めない! 

(それがどうかしたのか? 今の『俺が幻覚』っていう疑惑と関係してんのか?)

思わぬ切り返し……まさかタイトルを覚えているとは。
まさか……本物?
いや、私が記憶の片隅で覚えていただけかもしれない!

まだ、これだけで本物とは認めないっ!
えーと、どうしよう?
次はどうしようか?何て質問しようか?

私が覚えてないこと……あった!!
登場人物の名前だ!
これも答えられるのなら本物と認めなくもない。

――じゃあさ、その『ちぇんじ』に出てきた主人公の名前は?

さあ、答えられないでしょ?
ていうか、アナタ本当に幻覚だよね?
幻覚じゃなかったら、もし本当に本物の隼人くんだったら……後が怖いんだけど

(登場人物の名前? えーと、何だったっけな?)

ヨーシっ!!
そうでしょ!?答えられないでしょ?
ほら!やっぱり私の生み出した幻覚なんだよ!

(マリと……隼人か。確かに似てるかもな)

え?あれ?あれれれれ?
答え……ちゃったのかな?

うーん、自分でも記憶の片隅から引っ張り出してみる。
そんな名前だったかなー……と。
[ 2007/02/28 22:56 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

覚えてない理由 

うーん、どう思い返してもそんな気がするなあ……。
確か主人公の名前が自分とお母さんの名前に似てるし。
その相手役の名前がお父さんの名前だしで……恥ずかしくなって最後まで読めなかったような

――だから覚えてなかったんだ!!

そうだ!思い出した!
読んでる途中で、なんだか切なくなって最後まで読めなかったんだ!
そうかそうか、だったら自分で覚えてるはずないよねー。
というか、もう一つ質問を考えてたんだけど。
『ちぇんじ』のラストはどうなった?……って。
自分で覚えてないから答えが正しいかどうか判定しようがないよねー。

(覚えてないのに質問してんのかよ!!)

すごく真っ当な、鋭いツッコミが入る。
もしや、これはもしかして……私はすごく恥ずかしい勘違いをしてたのではないだろうか?

途中から薄々そうじゃないかなー……なんて思ってたのだが。
いや、思い返すとそうかもしんない。
私が知らない道を近道だって分かってたり。
私の名前を知らなかったり。
お父さんのことも、私が口にするまで結びつけてなかったり。

――やっぱり、本物の隼人くん……なのかな?
恐る恐る確認してみる。
もしも本物だったら、やっぱりもの凄く怒られたりするよね?

(さっきからそう言ってるだろうが!!)

やっぱり怒られた。
出来れば手短に、手短にお願いします!!
[ 2007/02/28 22:55 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)

タイミングのズレ 

叱責は思ったよりも少なく……というか、被害は免れることができた。

(アホかっ!)

隼人くんがそう言って怒ろうとした瞬間に……バスが出発したのだ
ナイス!ナイスだよ!運転手さん!
怒るタイミングをずらされてしまったようで、隼人くんはバツの悪そうな顔になっている。
あるよねー、怒るのが正当なはずなのにタイミングはずれて怒りにくくなること。

出発時の揺れが収まったときには、すでに怒るタイミングは去ってしまっていたようで。
これは私にとってはラッキーだったと呼べるだろう。

(そんで……どうすんだよ?)

小さく咳払いをしてみせてから、隼人くんがそう聞いてきた。
どうすんだよ、とは……やはりメールのことだろう。
『隼人』の名前で送られてきたメール

本当ならば、この人物を外に呼び出して、元に戻る方法を一緒に探すべきなんだろうけど……。
何故か隼人くんの名前を知っていることが引っかかる。
別に罠があるというわけでも無いだろうけど、まずはこの『隼人』と名乗るメール相手の正体を突き止めることが先決であるように思う。

――これ、誰だろうね

結局、隼人くんに向かって問えるのもそれくらいの質問になってしまう。
隼人くんにしたところで正体が分かるはずも無いのだろうけど。
この質問に対する隼人くんの返答次第でこの後の行動が決まるのではないかと思う。

隼人くんが、この人物の正体を気にしない、というのであれば、このままこの人物を呼び出すメールを送る。
隼人くんも、やはりこの人物の正体が気になるというのであれば、この人物の正体を探るメールを送り、その正体が分かってからこの人物と会うための算段をするべきだろう。

私一人で、どういう行動を取るかを決めかねてしまっている。
果たして、隼人くんは……どちらを選択するだろうか?
[ 2007/02/28 22:54 ] 番外編 Change ~type R~ | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

黒矢 一実

Author:黒矢 一実
主に短編小説を書いています。
現在のところ更新は不定期です。
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