僕は狂っていく~ぼくるい~

創作小説「僕は狂っていく」まとめブログです。 ジャンルは現代モノです。 基本的に「奇妙な話」です。

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-)

序章 

<見る側>

電車から降り、ホームから改札へ向かう。
改札を出て住宅街へ向かう道のり。
レンガで舗装された歩道を歩く。
コツコツコツと響く足音
5メートルおきに設置された街灯。
駅から15分ほどの距離
やがて家に着き玄関を開ける。

彼女を毎日見守る……僕のささやかな日課。

<見られる側>

仕事が終わって電車での帰り道。
朝の通勤ラッシュと違って帰りは幾分車内も空いている。
電車に揺られること一時間
私の住んでいる街に電車が着く。
改札を抜けて駅を出ると
レンガで舗装された15分ほどの帰り道。
コツコツコツ……響く自分の足音。
カツカツカツ……重なるように響く誰かの足音。
やがて家に到着すると誰かの気配は無くなる。

誰かに見られている……私の奇妙な日常。

スポンサーサイト
[ 2007/01/03 20:59 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)

きっかけ 

<見る側>

僕が彼女を初めて見たのは仕事帰りに電車の中
電車の端っこの席に座り
携帯電話をいじっている姿。
彼女も仕事帰りなのだろうか?
女性用のスーツに身を包み
顔はいささか疲れているように見えた。
でも……僕は一目で彼女を好きになった。
まるで……運命の赤い糸に導かれたように。

彼女を見守る日々はここから始まった。

<見られる側>

私が誰かに見られていると感じたのは
会社の帰りの電車の中。
メールを交わす相手がいるわけでもなく
携帯アプリのゲームで暇つぶしをしながら電車に揺られる。
人の乗り降りが多い駅を過ぎ
車内の人もまばらになった時
誰かの視線を感じるようになった。
気のせいか……?初めはそう思っていたのだけど
やはり誰かに見られているようだ。
近付くわけでもなく……離れるわけでもなく。

誰かに見られる日々は……日常の中に溶け込んでいく。

[ 2007/01/03 20:55 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)

ルール 

<見る側>

自分の中で決めたルール
それは『彼女に迷惑をかけない』
本当はもっと近付きたいけど……
でも現実は僕と彼女に接点は無い
勝手に彼女一目惚れした僕。
彼女には何ら関係の無い存在。
彼女の帰り道の間だけその姿を見ていられる。
それ以上を望めば、
もし彼女が僕を受け入れてもらえないとしたら
その姿を見ることさえできなくなる。

だから僕は彼女を見ているだけ……それ以上は望めない。

<見られる側>
私の中で決めたルール
それは『誰かの正体を暴かない』
本当は少し怖いのだけれど。
でも離れて見られているだけで
何かをされたわけでもない。
私には無害な存在。
帰り道の間だけ視線を感じる、ただそれだけ。
誰かを知ろうとしたら
もし悪質なストーカーだとしてその人物を刺激したら
何らかの実害が起きてしまうかもしれない。

だから私は受け入れている……この『大人しいストーカー』を

[ 2007/01/03 20:50 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)

幸せ 

<見る側>

今日の帰りの電車。
彼女の姿は無かった。
風邪でもひいて会社を休んだんだろうか?
それとも残業で遅くなっているのだろうか?
駅前で2時間ほど彼女を待ってみる
暗い夜道を彼女一人で歩かせるのは不安だから。
本当は病気なんじゃないだろうかと心配で
彼女の家を訪ねてみたい。
でも他人同士の僕にはそれはできない。
僕は自分の決めたルールを守りたい。

彼女に触れるほんの僅かな時間……それが僕の今の幸せ。

<見られる側>

今日は風邪で会社を休んでしまった。
きっと『誰か』もおかしいと感じているかも
いつもの時間のいつもの電車に私がいないのだから。
それとも最初から『誰か』なんていないのかもしれないな
暗い夜道の帰り道、不安に思う私が勝手に作り出した幻聴なのかも知れない。
もし『誰か』が家に侵入してきたらどうしようか?
他人なんだけど、見知らぬ人なんだろうけど
毎日同じ帰り道を歩いてくれる
不安なんだけど少し頼りにしている『誰か』
私は自分の決めたルールを少し破ってみたい。

『誰か』に見守られるほんの僅かな時間……私が感じる少しの幸せ。

[ 2007/01/03 20:45 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)

ハンカチ 

<見る側>

今日は彼女が電車に乗っている。
昨日は風邪だったのかな?
元気になって良かった。
彼女を見れるだけで、僕はこれほど幸せを感じられる。
いつもの帰り道。
少しだけ変化が起こった。
彼女がハンカチを落とした。
これが古い映画なら「ハンカチ落としましたよ」
そう言って声をかけるきっかけにするのだろうけど。
その行為ですら今の関係を崩しそうで怖い。

彼女に近付く小さなきっかけ……自分で決めた重たいルール

<見られる側>

風邪は全快したわけではないのだけれど
あまり『誰か』を心配させるのも悪い。
少し無理を押して会社に行った。
『誰か』のことを考えると、少し楽しい気分の私がいる。
いつもの帰り道。
少しだけ変化を起こしてみた。
私はハンカチを落としてみた。
これが古い映画なら「ハンカチ落としましたよ」
なんて『誰か』が声をかけるきっかけにするかも知れないな。
その行為さえしてこないだろうと私は確信しているのだけど……

私が破った小さなルール……少しの期待と少しの不安

[ 2007/01/03 20:40 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)

臆病 

<見る側>

拾ったハンカチを結局は持ち帰ってしまった僕。
鼻を近づけるとかすかに香る彼女の匂い。
近付かないを心に決めた僕には
絶対に感じられないと思っていた彼女の香り。
思わずもっと匂いを嗅ぎたくなって
クシャクシャにして自分の顔に押し当ててしまう。
ひとしきり彼女の存在を楽しんだ後
ハンカチを綺麗に洗濯して
丁寧にアイロンをかける。
そのまま彼女の家のポストに入れた。

彼女のくれた小さなきっかけ……僕に芽生えた少しの希望

<見られる側>

ハンカチはポストに入っていた。
綺麗に洗濯されてアイロンをかけられて。
本当なら少し怖いと思うんだろうけど
私は『誰か』が実在するという確信で
わずかに喜びを感じていたんだと思う。
私を見ている人がいる。
世間ではそれをストーカーと呼ぶのだろうけど
『誰か』をそう呼ぶには違和感を感じる。
臆病な……優しい『誰か』
ほんの僅かに感じる奇妙な繋がり。

『誰か』が私を見つけて……私が『誰か』に近付く

[ 2007/01/03 20:35 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)

縮 

<見る側>

ハンカチを届けた翌日
僕たちの間に訪れた少しの変化。
僕は彼女の後ろを15歩離れて歩く
それが僕の決めたルール。
彼女に近付いても良い限界の距離。
それが少し崩れた。
15歩離れて歩く僕。
ふいに立ち止まる彼女。
不安感を与えてはいけないとそのまま歩く僕。
僕が5歩ほど歩いた時点で動き出す彼女。

少し近付く僕と彼女……縮まった5歩分の距離。

<見られる側>

ハンカチがポストに入った翌日
私が提案した少しの変化。
『誰か』は決まった距離を離れて歩く。
それがきっと『誰か』のルール。
私に近付くギリギリの距離。
それを少し崩す。
いつもの距離で響く足音。
ふいに立ち止まってみる。
一瞬、とまどうように止まって……それからもう一度響きだす足音
1……2……3……4……5。5歩進んだところで私ももう一度歩き出す。

少しだけ……少しだけ縮める距離。5歩分だけど私から近付く。

[ 2007/01/03 20:30 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)

事件 

<見る側>

僕と彼女の距離が10歩に縮まって
2週間が経った。
平日にだけ行われる
僕と彼女の帰り道だけの距離の離れたデート。
コースも一緒、時間も一緒
でも僕は満足感を感じている。
彼女の姿を見ながら歩くだけで
僕はこれまでの人生で感じたことの無い喜びを感じている。
少しの希望を胸に持ちながら
それでもこの関係が続くのを望んでいるような……

そんな時に……事件は起こる。

<見られる側>

あれから2週間が経った。
私と『誰か』の距離は同じなまま。
平日にだけ、離れたところで
同じ場所、同じ距離を歩く。
変わるのは天候と季節だけ。
少しの不満を感じながらも
私は今までの人生で感じたことない穏やかさを感じている。
この関係を進めたいような
でも、この関係のままのほうが良いような……
臆病なストーカーに大胆な私……本当に奇妙な関係。

そんな時に……事件は起こった。

[ 2007/01/03 20:25 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)

第三者 

<見る側>

いつものように
彼女の10歩後ろを歩く僕
これ以上は離れないし近付かない。
いつもと違うところ
それは僕と彼女の間
10歩の距離の中間に他の人間がいた。
中年のサラリーマン。
フラフラして……酔っ払ってるのか?
邪魔だな……そう思いつつも僕は彼女とのデートを楽しんでいた。
その時……中年サラリーマンが彼女の肩に手をかけた!

ルールを守るか?……彼女を守るか!?

<見られる側>

いつものように
私と少し離れて歩く『誰か』
でも今日はその間にもう一人誰かの足音。
「うぃ……バカヤロー……」
そんな声が聞こえる。
酔っ払いか……
私と『誰か』の大切な時間を邪魔しないで欲しい。
静かで、穏やかで、幸福感さえ感じられるようになったこの時間を……
その時、私の肩を掴まれる感触!
「ねーちゃん……一緒に飲もうぜぇ?」

勇敢な私が撃退する?……臆病な『誰か』に期待する!?

[ 2007/01/03 20:20 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)

葛藤 

<見る側>

中年サラリーマンを止めるのは簡単だろう
少しだけ駆け寄って
「何をしてるんだ!」
そう言えばいい。
相手は酔っ払いだし
仮に暴力に訴えられても
それでも若い僕の方が有利だろう。
でも……僕の決めたルールはどうなる?
これ以上彼女に近付いてもいいのか?
でも……彼女を守らなきゃいけないんじゃないか!?

葛藤の中……僕は駆け出していた。

<見られる側>

この酔っ払いを撃退するのは簡単だろう。
呂律も回ってないし
足元もふらついている。
「何するのよ!」
キツク拒否すれば逃げ出しそうな容貌。
仮に逆上して暴力に訴えられても
このフラフラさだ。
足を1、2発蹴飛ばして急所を蹴り上げれば撃退できるだろう。
でも……これはチャンスなんじゃない?
今まで縮まらなかった私たちを近づける

私は臆病者の助けを待つ……『誰か』の駆けつける足音が聞こえたから。

[ 2007/01/03 20:18 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)

顔合わせ 

<見る側>

「何してるんだ!」
ついに破ってしまった自分の中のルール。
酔っ払いの肩を掴んで彼女から引き離す。
「あ……スイマセン」
急に弱気になってスゴスゴと退散する酔っ払い。
僕のルールを曲げさせたのに
そんなことはお構いなしに
ヘコヘコ頭を下げながら夜道の先に消えていく。
消えていく中年サラリーマンの方向から
僕の方向へ顔を向けた彼女。

「あの」……その声を聞くと同時に僕も夜道を駆け出してしまった。

<見られる側>

「何してるんだ!」
街灯の明かりの下に響く若い男性の声。
酔っ払いの肩を掴んで私から引き離す。
「あ……スイマセン」
あっさりと引き下がる酔っ払い。
酔っ払いがいなくなるのを確認して
『誰か』……彼の方向に振り向いた私。
私の中で見知らぬ『誰か』に顔が出来た瞬間。
「あの」……私がお礼を言おうとした瞬間
彼は闇の中に走り去ってしまった。

勇気を出した臆病者……私が応えてあげれること……

[ 2007/01/03 20:15 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)

これから 

<見る側>

気が付けばいつもの電車に乗ってる僕。
彼女に会いたいと言うのもあるけど
いつもの生活をしていると自然とこの電車に乗ることになる。
自分で破ってしまったルール……
今日からはあの幸福な時間は過ごせない。
それでも僕は彼女を見てしまう。
いつもの車両、いつもの席。
今日は携帯をいじっていない。
会社の書類だろうか?
何かを何度も読み返している。

彼女を守れた達成感と……彼女から離れないといけない後悔と。

<見られる側>

いつもの電車に乗れば
きっと彼と会えるはず。
上司に頼まれた残業を拒否して
いつもの席に座る。
人の乗り降りが多い駅を過ぎると
車両の中の人が全て見渡せるようになる。
私はそれとなく周囲を見回し彼を探す。
向かいの席の対角線上の端っこ
彼は座っていた。……ずっとそこから見ててくれたんだね。
私はもう一度手紙を読み返す。

これまでと……これからのために

[ 2007/01/03 20:12 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)

逆転 

<見られる側>

電車を降りる。
改札に向かう。
改札を出て……僕の家の方向へ。
彼女の家の逆方向。
ルールを曲げた自分への罰。
足取りの思い帰り道。
あの僅かな時間が自分の生活の活力だったと思い知らされる。
誰もいない部屋に戻る。
ポストの中の夕刊をとって
テレビを見ながら夕食を食べる。

テレビの音に消された……郵便受けの『カタン』という小さな音

<見る側>

立ち上がるタイミングを
いつもより10秒遅らせて
彼より後に電車を降りる。
改札を出て向かったのは
私の家と逆方向。
彼の後方を10歩離れて歩く、いつもとは逆の行動。
彼の行動を真似してみて、彼の私への思いに胸が少し熱くなる。
部屋に入る彼を見届けて
灯りが点くのを確認する。
ドアの向こうから聞こえるテレビの音。

小さな音を立ててポストに入った手紙……明日の朝に伝える思い

[ 2007/01/03 20:09 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)

終章~手紙~ 

拝啓 名前も知らないアナタへ

はじめまして……というのも違和感を感じる挨拶ですね。
先日は酔っ払いにからまれた私を助けていただきありがとうございます。
さて、色々なことをお話したいのですが
これだけ長い間一緒にいるのに
アナタのことが何も分かりません。
だから私のやりたいことだけ伝えたいと思います。

『アナタといつもとは違う時間に違う場所で隣に並んで歩きたい』

それではいつもの場所でお待ちしてます。 西沢 めぐみ

これからやっと始まる……臆病者の本当の恋。

[ 2007/01/03 20:01 ] 番外編 臆病な恋 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

黒矢 一実

Author:黒矢 一実
主に短編小説を書いています。
現在のところ更新は不定期です。
コメントを頂けると非常に嬉しいです。
リンクはフリーです。
リンクされる際にメッセージを一言いただければ嬉しいです。
相互リンクも募集してます。

今このページを見てる人
現在の閲覧者数:
これまでこのページに来てくれた人
メールはこちらに

名前:
メール:
件名:
本文:



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。