僕は狂っていく~ぼくるい~

創作小説「僕は狂っていく」まとめブログです。 ジャンルは現代モノです。 基本的に「奇妙な話」です。

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「迎えにきたよ」 

これまでの人生、真面目に生きてきた。
自分ではそう思う。
人には親切に、嘘はつかず、誠実に。
これからもそうやって生きていこうと思っていた。
それなのに……この状況は一体どういうことだろうか。
この目の前の少女の言ったことに
今、僕はもの凄い戸惑いを覚えている。

迎えにきたよ
大学の夏休み、買い物をしに街まで出てきていた。
目的の物を買い電車の駅に向かおうとした僕の前に
いきなりセーラー服を着た女子高生らしい子が立ちふさがる。
身長は150センチくらい、痩せ気味でスラっとしたスタイル。
腰の辺りまである長く黒い艶やかな髪が印象的だ。

「へ? ……迎えに?」

全く見ず知らずの少女にいきなり「迎えに来た」と言われても
何を言っているのか全く理解できない。
しかし無碍にも扱うこともできないし……
恐らく人違いだろう。

「あの、人違いじゃないですか?」
できるだけ丁寧に、やんわりと否定してみる。
そんな僕の否定に対して少女はニッコリと微笑んで
「ううん、人違いじゃないよ! 加藤 健さん!」
僕の名前を呼ぶ。
うーん、どうやら人違いではなさそうだ。
だが、この少女に見覚えは無い。

迎えに来たと言うけど……どこに連れて行く気なんだろう

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[ 2007/01/01 23:59 ] 番外編 死神ちゃん | トラックバック(-) | コメント(-)

「『死神』です。ヨロシクね」 

「ここで立ち話もなんだから……移動しよっか!」
見ず知らずの少女に先導され駅前の喫茶店に入った僕達。
僕はアイスコーヒーを、彼女はレモンティーを注文した。
「あ、自己紹介がまだだったね」
注文を終えると彼女がそう切り出す。
ここまで流されるままだった僕、ここも彼女の自己紹介を待つ。
「えと、『死神』です。ヨロシクね」
え? 死神って……どう見ても普通の女子高生が?
あまりに突拍子もない自己紹介に僕は絶句する。
「それで、あなたの命はあと4時間なのね。だから迎えに来たってわけ」
え? え? えええええええええええ!?
サラっとトンデモないことを言う女子高生。
ぼ、僕の命が……あと4時間!?
この女子高生は……僕を殺しに来たの?

「えっと、落ち着いて聞いてね?」
動揺する僕に女子高生……いや、死神が話を続けようとする。
落ち着くも何も、こんな自分の命を狙う人間を前に落ち着けるわけがない。

「あなたが死ぬのは運命なのね、それは残念だけど避けられないの」
「――君が僕を殺すってことじゃ無いってこと?」
「そう、私は運命に従って人間が死ぬのを見届けるだけ。
――『死神』ってね死んだ人間の魂が迷わないように
神様のところまで送り届ける役割をしてるんだ、
私達が人間を殺して魂を奪うわけじゃないんだよ」
死神が僕にそう説明する。
にわかには信じれるものではないが

もしそれが本当なら……僕はなぜ後4時間で死んでしまうんだ?

別に病気もしていないし、健康そのものだ。
「僕は……どうやって死ぬのかな?」
目の前の死神と名乗る少女に質問する。

「それは……ごめんね、話しちゃいけない決まりなの」
申し訳なさそうに死神が謝る。
両手を合わせ、片目をつぶり、ペロっと舌を出す仕草。
どう見ても普通の可愛い女子高生で死神とは信じにくい。
「――本当に君って死神なの? 
どう見ても……その、普通の『女子高生』にしか見えないんだけど」

ずっと感じていた疑問を直接本人にぶつける。
いくら僕がお人好しとはいえ、冗談にしても少し悪質だと感じた。

[ 2007/01/01 23:57 ] 番外編 死神ちゃん | トラックバック(-) | コメント(-)

「この姿は借り物なんだ。あまり気にしないでね」 

僕の質問にも死神は全く動じていなかった。
「ああ、この格好だから信じられないのか」
喫茶店の窓に映る自分の姿をしげしげと眺めて
僕の言葉に納得するような様子だ。
「この姿は借り物なんだ。あまり気にしないでね」
「借り物って……本当の姿は別ってこと?」
「そうなの、私達はこの世界では実体が無いからこの世界の人の体を借りるの
「体を?」
「そう、あなたみたいな真面目な人の体を、ね」
死神の説明によれば彼女(?)たちは
清い魂の持ち主が死に至る際
死神がその死ぬ人間に近しい魂の清い人間の中に入り
その死を見届けるのだそうだ。
今回はたまたま僕の周囲の人で魂の清い人が近くにいなかったため
僕と面識は無いが魂が清いこの少女のが近くに居たため
体を借りて僕の死を見届けに来たのだと言う。

「じゃあ、何で死ぬ前にわざわざ教えに来てくれたの?」

もし、この少女が本物の死神だとして、なぜ僕に僕が死ぬことをわざわざ教えるのだ?
この少女にとりついてそのまま僕と接触せずに死ぬのを見届ければ良いのではないだろうか?
僕のこの疑問に死神が説明を加える
「それはね、真面目にこれまで生きてた人への神様からのご褒美なの。
死の間際じゃなくて死ぬ少し前に教えてあげて
その人に少しでも心残りが無いように神様の下へ案内するために、ね」
なるほど、真面目に生きた……ご褒美、か。

もしこの少女の言っていることが本当なら僕の心残りは何だろう?
もう少し長生きしたかった気もするが……基本的に心残りは無い。
自分のモットーである『人には親切に、嘘はつかず、誠実に』
これを守って自分ながらにこれまで納得の行く人生を歩めたと思う。

[ 2007/01/01 23:55 ] 番外編 死神ちゃん | トラックバック(-) | コメント(-)

「何か……心残りはある?」 

「何か……心残りはある?」
考え込む僕に死神が聞いてくる。
心残り……かぁ。

「死ぬ前に……この世界をゆっくりと見ておきたいかな?」
本当に死んでしまうのなら……あと4時間を切ってしまっているなら
特定の誰かに会うんじゃなく
この世界の景色をゆっくり眺めて
心に刻んで死んでいきたい。そう思った。

テーブルに運ばれたアイスコーヒーを一気に飲み干し
死神と一緒に喫茶店を出る。
そのまま電車には乗らずもう一度街の方向へ歩き出す。
残りは3時間と少し。
色々な景色を見ておこう。
死神は僕に付かず離れずの距離で付いてくる。

「心配しなくても……逃げないよ」
微笑みながら彼女に話しかける。
「うん、分かってるよ。そういう人だから前もって運命を告げることができたわけだし」
「そう? じゃあせめて並んで話しながら歩かない?」
一人で歩くより、誰かと話しながら歩いた方が楽しい。
正直なところ死ぬのは怖い。
死神と話しながら歩いて死ぬ恐怖を紛らわすというのも可笑しな話だとは思うけど

[ 2007/01/01 23:53 ] 番外編 死神ちゃん | トラックバック(-) | コメント(-)

「ちゃんと神様のところに案内するからね」 

死神はイメージの死神とは大違いなほど良くしゃべる。
とりついた人間の元の性格に左右されてしまうそうだが
明るく、屈託の無い笑顔が僕の死への恐怖を和らげてくれる。
「本当はね、あなたみたいに事前に死ぬのを告げるのって私初めてなの
話が弾んできた頃、ふいに彼女が呟いた。
こうやって、事前に死の運命を告げるのは
死神の中でも役職が上の者の仕事なのだそうだ。
彼女もこれまで下級死神として仕事をやってきて
今回の僕が初めての事前の告知なんだそうだ。

「これで死んじゃうあなたには少し悪いんだけど……張り切ってるんだよね!」
握り拳を作ってガッツポーズを見せる死神。
出世だとか、初仕事で張り切るとか
死神の世界も色々と大変なようだ。

どれくらい話しながら歩いたのだろうか……?
時計はそろそろ彼女と出会ってから4時間を経過する時間を迎えようとしている。

「どうやって死ぬのか分からないけど……最後は静かな場所で迎えたいな」
そう死神に告げて、公園のある方向へと向かう。
いま居る場所から公園まで10分の距離だ。
死神が僕に告げた時間までもあと10分。
これから公園へ向かえば僕は公園で静かに死ぬことができるはずだ。

ここに至っても自分が死ぬ実感は無い。
どうやって僕は死ぬのだろう?
突然に人間が死ぬとすれば……心臓麻痺? 脳梗塞?
全然思い浮かばない。
「苦しまずに死ねるといいんだけどね?」
彼女に話しかける。
少しだけ彼女の表情が沈痛なものに変わる
「うん……ごめんね。ちゃんと神様のところに案内するからね……」
今にも泣きそうな表情。
「頼んだよ、これでも僕、方向音痴だからさ」
彼女に罪の意識を持たせないように努めて明るく振舞う。

並んで歩くうちに公園が見えてきた。
――あそこが僕の死に場所になるんだな。

[ 2007/01/01 23:49 ] 番外編 死神ちゃん | トラックバック(-) | コメント(-)

『間違ってごめんなさい』 

公園の入り口にさしかかる直前。
横断歩道の信号にひっかかった。

4時間まであと2分……間に合うかな?
せめて公園で静かに死ぬ、その望みくらいは叶えたいと思う。
心配するまでも無く信号はすぐに青に変わった。
横断歩道を渡り公園に向かう。
そこに信号を無視して突っ込んでくるトラック
正面に手を繋いで歩く親子連れ
トラックはブレーキが間に合わずそのまま親子に向かって突っ込んでいく
母親が子供の手を引っ張りトラックを避けようとする
ふいに手を引っ張られて子供が転んだ

――間に合わない……!!!

そう思った瞬間に……僕は子供を突き飛ばしていた。
周囲の様子が全てスローモーションに見える。
これまでの人生の記憶が頭に巡る
――ああ、これが走馬灯ってヤツか。
時間はちょうど死神と出会って4時間。
そうか、この事故で僕は死ぬ運命だったんだな

死を覚悟した瞬間……僕は後ろから誰かに引き戻された。

後ろを振り返ると、そこには死神が涙を流しながら立っていた
この子が僕を助けてくれたのか……あれ?
僕はここで死ぬのが運命だったんじゃないのか?
「あはっ、あはははははは」
涙を流しながら死神が急に笑い出した。
「ご、ごめんねぇ!人を間違ってたみたい!」
唖然とする僕をそのままに彼女はマシンガンのように話し続ける。
「『加藤 健』さんだよねぇ、あなたって。間違えたよ『加藤 健一』さんが死ぬ予定だったのに」
誰に話すでなくひたすら話し続ける死神。
「危なかった~!!関係ない人死なせちゃうトコだった!危ない危ない……!」

「え? じゃあ、僕は……死なないで……済むのか?」
ようやく死神の言葉の意味を理解できた。
人違い……だったのか。
「そうなの!ごめんねぇ!迷惑かけて!じゃ、じゃあね!」
急に瞳を閉じる死神。
その瞬間にガクっと倒れそうになる女子高生。
それを慌てて抱きかかえる僕。

パパーーーーーーー!!!!!

いきなり響くクラクションの音
……信号がもう赤に変わってる!!
まだ気が付かない女子高生を抱えて横断歩道を走って渡る。
そのまま公園に入りベンチに腰掛ける。
横に寝かせた女子高生はまだ意識を取り戻さない。
そのまま待つこと5分
「う……ううん」
少女が目を覚ましたようだ。
これで安心して家に帰れる。
ベンチを立ち歩き出そうとする僕を少女が呼び止めた。
「あ……!! 待ってください!」
「え?」
振り返る僕の彼女が告げる。
「伝言です!『間違ってごめんなさい』って!」

いいよ、楽しかったから。
次こそはちゃんと仕事するんだよ?
ドジで明るい死神さん……!

[ 2007/01/01 23:45 ] 番外編 死神ちゃん | トラックバック(-) | コメント(-)

「ねえ死神さん」 

あれから60年が経った。
僕は死神に案内されて神様の所へ向かう道の途中だ。

あの時の女子高生だった彼女と
あの事件をきっかけにお付き合いを始め
そのまま結婚に至った。
子供や孫にも恵まれて
自分でもなかなか良い人生だった
自宅で眠るように息をひきとり
彼女と、彼女にとり憑いた死神に死を看取られる。

60年前の間違いがあって
その彼女と幸せに人生を過ごすことができた。
こう考えれば、あの死神はドジではあったが
僕にとっては恋のキューピッドだったと思える。
こうやって、死神のいる世界にきたことだし
お礼を兼ねて挨拶でもしてみたくなった。

「ねえ、死神さん」
僕を先導している死神に話しかける。
「なんですか? 加藤さん」
以前、ちょっとお世話になった死神さんに挨拶したいんですが……」
「ああ……」
すこし困ったような表情を見せる死神。
どうしたのだろうか?
「以前、加藤さんの案内に失敗した死神ですね……
アヤツは任務に失敗したので……処分されたんですよ
え? どういうことだ?
案内する人間を間違えたから処分されたのか?
だとすればえらく厳しい処罰だ。

「本来、加藤さんは60年前に死亡する運命だったんです。
それを死神が情に負けて寿命を捻じ曲げてしまった。
死神にとって一番の重罪なのですが
……上級になりたてで我々としても……悲しい失敗でした」

そうだったのか……どうも人間は死んだ後でも悲しいという感情を持てるようだ。
魂だけになったはずの僕は涙を流していた

自分の存在を捨ててまで……僕の命を助けてくれた……ドジな死神のために

[ 2007/01/01 23:39 ] 番外編 死神ちゃん | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

黒矢 一実

Author:黒矢 一実
主に短編小説を書いています。
現在のところ更新は不定期です。
コメントを頂けると非常に嬉しいです。
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相互リンクも募集してます。

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