僕は狂っていく~ぼくるい~

創作小説「僕は狂っていく」まとめブログです。 ジャンルは現代モノです。 基本的に「奇妙な話」です。

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序章 

運命とは……波間を漂う木の葉のようなものである

潮に流されいずれは岸辺へとたどり着くかも知れない。
はたまた嵐に巻き込まれ海底に沈み、そのまま海の藻屑と消え去るかも知れない。

大きなうねりの中、小さきモノはただ……流されるしか出来ないのかも知れない。

ここにも一つ、『運命の悪戯』が産まれた。

ある日の夕刻のこと。
一人の男が海辺に立っていた。
波打ち際を眺め、ただ黄昏れていた。

小さな箱があった。
いつの頃からか海の上を漂い、波に流され――永遠とも思える時のあいだ海の上を彷徨っていた。

その日、たまたま潮の流れが岸に向いた。
岸へと流れ着いた小さな箱はいつもの如く誰にも見つけられぬまま再び潮の流れにさらわれ、再び海に還るはずだった。
しかし、その日、たまたま一人の男が波打ち際を眺めていた。

偶然に偶然が重なり、小さな箱は一人の男に発見された。
そこにさらに偶然が重なり……一人の男は小さな箱を手に取った。

偶然が三つ重なった時……そこに発生するものを人は――『運命』と呼ぶ!
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[ 2007/01/01 23:59 ] 超番外 仮面ライダー 0 ~ZERO~ | トラックバック(-) | コメント(-)

第1話 『システム起動!』 Aパート 

加納 大河(かのう たいが)は迷っていた。
飲むべきか――飲まざるべきか……を。
彼の目の前には現在、なみなみと注がれたビールが置かれてあった。
そして、向かいの席には彼が憧れるクラスのマドンナ、木崎 弥生(きさき やよい)の彼を見つめる視線が――。

(どうする? 俺、どうする!?)

大学生の春の恒例行事といえば新入生歓迎コンパ、略して『新歓コンパ』だろう。
各部活、サークル、ゼミなどで新入生を歓迎するという名目でこの時期色々な場所で飲み会が催される。
大河も一般的な大学生の例に漏れず、所属するサークル『海洋研究会』の新歓コンパに参加していた。
重々しい名称とは裏腹に夏になれば海に行って遊ぶだけのサークルなのだが大学入学当時から大河はこのサークルに参加しており今年で三年目を迎える。
このサークルに入会した目的が大河の目の前に座る女性――弥生だった。

その弥生を目の前にしてなみなみと注がれたビール。
カッコイイところを見せたい……だが、大河の酔いは限界を迎えていた。

(飲めば吐く……潰れる……)

無理に断れば恐らくこの場がシラけてしまうだろう。
そうすれば弥生からの自分への印象も悪くなってしまうかもしれない。
二年間想い続けて、未だ友達関係である大河と弥生。
少しでも彼女との距離を緊密にしたい大河にとって彼女からの印象を少しでも下げるのは避けておきたかった。

(ええい! 南無三!!!)

意を決し、ジョッキに注がれたビールを一気に口に運ぶ。
「一気! 一気!」と周囲からはやし立てる声が聞こえる。
ジョッキの中のビールが半分ほど無くなったその時――大河の意識は遠い宇宙へと旅立った。

目が覚めたとき、大河は公園のベンチで寝かされていた。
周囲を見回すが……誰もいない。
どこかから犬の遠吠えが聞こえるのみでまるで人気も無い。

「ファーックション!」

春とはいえ夜中は冷える。
誰も居ない公園のベンチの上で大きなくしゃみを一つして、大河は寒さに震えた。

「くっそ、何で誰も居ないんだ?」

誰にともなく文句を呟き、ベンチから立ち上がろうとする。
急性アルコール中毒で倒れたのであろう身体は大河の言うことを上手く聞いてくれず、まだ足元がふらつき大河はそのまま立ち上がったはずのベンチに自分の意識とは裏腹に再び座り込んでしまった。

「うう……気持ち悪い」

ベンチの上でヘタリ込み、下を見つめる。
地面に固定された大河の視界の中に――赤いミュールを履いた白く、細い足首が飛び込んできた。

「あ! 目が覚めたんだ。良かった~」

大河が視線を上に上げるよりも早く、耳に入ってきたその声は――まぎれも無く大河の想い人、弥生のものだった。
驚きと喜びの感情に包まれながら視線を上に上げると、そこにはスポーツドリンクのペットボトルを抱えた弥生の姿があった。
どうやら酔いつぶれた大河のためにわざわざ買ってきてくれたものらしい。
ベンチの上でへたり込んでいる大河に弥生はペットボトルを差し出した。

「……みんなは?」

弥生からペットボトルを受け取りながら大河が尋ねる。
夜の公園はほのかに白い街灯の明かりに照らされている。
その明かりの下、大河は弥生と二人きりであることに気が付いた。

「二次会に行っちゃった。私は……その」

そう答えながら弥生が指をもじもじさせながら俯く。
弥生も酔っているのだろうか?顔が心なしか紅潮しているように見える。

「その……?」
「その……ね。大河くんが心配だったから」

弥生がそう言った瞬間、公園に寒風が吹きぬけた。

「ファーックション!」

寒風に吹かれて大河が発したくしゃみが二人の甘い時間の終了合図となってしまった。

「冷えるし……帰ろうか?」

弥生は強引に大河の手を取り、ベンチから大河の身体を引き起こす。
酔いに加えて、掌から伝わる愛する人の体温は大河の身体から抵抗する力を全て奪い取ってしまった。
ニヘラ~と笑う大河を公園の外へ連れ出し、弥生は素早くタクシーを拾う。

停車したタクシーに大河を押し込み運転手に「行ってください」と短くドアの外から告げる弥生。
一瞬、唖然とした後、大河は慌てて車の窓を開けた。

「あ、あの! 木崎さん!」

そう叫びながら窓の外に顔を出した大河。
だが、勢いはそこまででその後の言葉は続かなかった。

「その……あの……えと……今夜は……」

本当ならばこのままここで告白を……。
そう思うのだが頭で考えることに身体が着いて来てくれない、そんな状態になってしまった。
そんな大河の様子を見ながら弥生は優しく微笑み――チュッ!
大河の頬にそっとキスをした。

「おやすみ、また明日ね。気をつけて帰るんだよ!」

弥生のその言葉を合図にするようにタクシーは走り出した。
タクシーの車内には――天国へ昇る大河の姿があった。

運転手に自宅の住所を告げ、大河はタクシーの車内で眠っていた。

「おい! 何をするんだ!?」

大河の脳裏にどこかで見たような、でも初めて見るような。
そんな曖昧な光景が浮かんだ。
どこかの病院のベッドのような場所。
そのベッドの上で大河は縛り付けられていた。
もがいても、どれほど身体を動かそうとしても縛りつけられているために指ぐらいしか動かすことが出来ない。
大河の周囲を取り囲むように立っている白衣の集団が見えた。
医者のような、だが何か様子が違う。

大河がもがいているうちに、白衣の集団の一人が注射器のようなものを持ち出した。

「お前ら! 一体何なんだよ!? 何をするんだ!!」

大河の叫び声を無視して、大河の首筋に注射器を突き立てる白衣の男――。
ブスッ!!
身動きのとれない大河の首筋に問答無用で巨大な注射器が打ち込まれた。

「着きましたよ、お客さん」

中年のタクシードライバーの声で大河は目覚めた。
息は荒くなり、額には汗が浮かんでいる。

(夢だったのか――)

思わず首筋を触る。

(ッッツ!!)

触った箇所に鈍い痛みが走った。
タクシーの窓に映る自分を見ると大河の首筋に虫刺されのような跡が出来ていた。

(――ッ!!!)

声も出ないような驚きに支配される大河。
先ほど見たのは夢だったのか?それとも現実に起こったことを思い返していたのか?
混乱に支配されかかる大河――。

「お客さん!四千八百五十円!!」

タクシーの運転手の声が大河を現実に引き戻した。
運転手に五千円札を手渡し、釣りはいらないと告げてタクシーを降りる。
どうやら自宅の一区画手前で降ろされてしまったらしい。

曲がり角の先にある自宅へと向かい歩く大河。
先ほどタクシーの車内で見た、現実とも夢とも付かない脳裏に浮かんだ映像。
それが頭の中を支配していたのだが――。

それは曲がり角を曲がった瞬間に大河の頭の中から吹っ飛んだ。

この夜、大河は天国と地獄を一遍に味わうことになる。

曲がり角を曲がった大河がその目で見たもの――。

――それは、跡形も無くなった我が家だった。
[ 2007/01/01 23:59 ] 超番外 仮面ライダー 0 ~ZERO~ | トラックバック(-) | コメント(-)

第1話 Bパート 

どこをどうやって歩いたのだろうか?
家を失ったショックで意思を失ったように茫然自失のまま繁華街に大河の姿はあった。

脳裏に浮かぶのは――まるで爆発でもしたかのように破片のみになった我が家の姿。

(母さんは!? 沙紀は!?)

家に居たはずの母と妹を探したが……残骸となった家の跡には何も発見することは出来なかった。
110番通報をしたものの、電話の向こうの警察はまともに自分の話を取り合ってくれなかった。
いや、まともに取り合ってくれないどころか――自分の家が元から無かったような対応だったのだ。

「はい、110番です。事故ですか?」
「家が! 家が無くなってるんです!」
「落ち着いて話してください。どうされました?」
「家に戻ったら……家が! 爆発したみたいに!」
「はいはい、落ち着いてください。お宅の住所は?」
「宝西市の葉月町3の2、加納です!」
「……ハイ? そんな番地ありませんよ?」
「ええ!? そんな馬鹿な!?」
「葉月町は3の1しかないですよ? いたずらか?」
「そ、そんなはずは! ちゃんと調べてください!」
「悪戯なら切りますよ!」

まるで悪夢を見ているようだった。
大河の家は最初からこの世に存在していないと言うのだ。

おかしな事はそれだけに留まらなかった。
あれほど、家が跡形も無くなるような『何か』が起こったはずの場所に消防車も、救急車も、野次馬さえも集まっていなかったのだ。
まるで――大河の家のあった場所は初めからただの破片の散らばる空き地であったかのように。

父親の携帯も繋がらなかった。
大河の父は海外で研究員として勤務していた。
あまりの出来事に気を動転させつつも、何とか最後の理性を頼りに父の携帯をコールした――はずだった。

しかし、受話器の向こうから流れてきたのは。
『この番号は現在使われておりません』という意味の英語のアナウンスだった。

(一体、何がどうなっているんだ!?)

茫然自失の中で大河は思考を頭の中で文字にするのが精一杯だった。
自宅は消え、母と妹は行方不明。父の携帯は繋がらず、まるでつい先ほどまで存在していた自分の周囲の世界がすべてまやかしだった言わんばかりの現象に大河は混乱しきっていた。

(そうだ……!)

自分の世界がまやかしでは無かったと確認するために――大河は携帯電話を取り出しアドレス帳の中から一人の人物を選んで『発信ボタン』を押した。
アドレス帳に表示されている名前は『木崎 弥生』。
最後に自分と会っていた弥生に電話をして、せめてこの世界と自分は切り離されていない。
自分の居た世界はまやかしでは無かったという確証を得たかった。

だが、大河のささやかでまっとうな願いはすぐに掻き消されることになった。
携帯電話が発信されなかったのだ。
「ツーツーツー」という音が受話器から聞こえ、大河は携帯電話のディスプレイを確認する。
そこには電波が届いていない証である『圏外』の文字が表示されていた。

「あー、うん。そうそう。そんでさ――」

大河の横を携帯電話で会話しながら歩く若者の姿があった。
この繁華街の中で……自分の携帯電話だけが圏外になっている。

この時、唐突に大河は朧げながらに理解した。

『自分は――世界から『隔絶』されてしまったのだ』と。

自分を見失ったまま大河は街を彷徨う。
ふらふらと、どこへ向かうわけでも無く……。
酒はもう体内に残っていないようだった。
だが、思考は頭の中で纏まることは無く、身体もまるで自分の物では無いように言うことを聞いてくれない。
目の前に見えている繁華街の華やかなネオンでさえ大河には絶望に染まった色に見えていた。

ドンッ!!

不幸な状況がさらに不幸を呼んでしまったのだろうか?
ふらふらと定まらない足取りで歩く大河は道行く通行人とぶつかった。

ここで大河にとって不運だったこと。
それは大河の意思がはっきりとしない、朦朧な状態であったことだろう。
自分の肩が相手の肩にぶつかってしまったことも意思の内に入らず、大河はまるで相手を無視してしまったかのような形でその場を過ぎ去ろうとしてしまった。
普段の大河であれば、まず道行く人に不用意にぶつかってしまうこともなかっただろう。
ましてや、ぶつかってしまったとしても相応の謝意くらいは示すことができる。
コトを大きくしてしまうような状況には陥ることなく回避できたはずだった――。

ガシッ!

通り過ぎようとした大河の肩を何者かが掴んだ。
掴んだのは先ほどぶつかった通行人であったが、その人物は大河の意識の外に居る人物。大河には何が起こったのか一瞬理解できなかった。
肩を掴まれた瞬間、大河の脳の中にようやく自我とも呼べるものが還ってきた。
そして、ようやく自分の置かれた状態が理解できたのだった。

掴まれた肩とは反対側の肩に何かとぶつかったような衝撃の余韻が残っていた。
そして、現在掴まれてしまっている自分の肩。
大河は自分の肩を掴むこの人物にぶつかってしまい、尚且つ自分が会釈さえもしていないことを理解した。

(……しまった!)

そう思いながら振り向くと、締まった体型の大柄のサラリーマン風の格好をした男が自分の肩を掴みながら大河の顔を睨みつけている。
時間がかかってしまったものの、通常時に近い思考回路に戻った大河はすかさず謝意を告げる。

「あ、すいません」

本来ならば、相手がよほど常識の無い相手でもない限りは、この大河の謝罪によって事態は収束していたはずだった。
しかし、今夜は――いや、今夜に限ったことではなくなっているのかも知れないが、大河にはさらなる不運が待ち受けていた。

「?? ?? ???? ? ? ? ? ????」

相手は……大河には日本人に見えていた。しかし、彼の口から発せられた言葉は――明らかに他の国の言語だった。
大河の肩を掴んだまま、異国のサラリーマン風の格好をした男の表情はさらに怒りに溢れたものに変貌を遂げていく。

不幸に見舞われ、その不幸によって引き起こされた心身の状態によって、さらに不幸が押し寄せてくる。
そんな不幸のスパイラルに囚われた大河は――そのまま異国の大柄な男によって裏道に連れ込まれることによって不幸の最高潮を味合わされようとしていた。

ガシッ!ドカッ!!

表通りの喧騒とは裏腹に、不気味なほど静まり返った裏道に嫌な音が響き渡る。
先ほどの異国の男がひたすら大河を殴り続けている音である。

「??? ? ? ?? ????
????, ? ??? ?? ??? ??? ? ??!」

男は大河を殴りながら何事か叫ぶ。
大河にはその叫び声が何を意味しているのかまるで理解できない。
また、理解できたとしても現在の大河にはその言葉に何かを返せる程の体力も意識もほとんど残ってはいなかった。

ドゥッ!!

フラフラになっている大河に男の放ったボディブロウが綺麗に命中する。
大河の身体は『くの字』になり、そのまま前のめりの大勢で地面へと倒れこんだ。

「うう……」

もはや、大河にまともな意識は残っていない。
本来ならば、大河はこのような暴漢にむざむざとやられてはいなかっただろう。
小学生から、高校生までの間に大河は剣道を習っていた。
その腕前は確かなもので、高校時代には全国大会に出場を果たしたほどのものである。
身体さえ、心さえまともな状態ならば、路地裏に転がっている角材の一本でも拾い逆にこの暴漢を滅多打ちにしていたのだろう。
だが、今夜の大河は抜け殻に近いような存在であり、現実は暴漢に一方的に打ちのめされるのみであった。
力なく地面に倒れ、うめき声を上げるのが精一杯の状態――これ以上、この異国の男から暴行を受ければ死んでしまう。そんな状態だった。

(なん……で、こんな……目……に)

そう思いながら薄れいく大河の意識をまるで意に介さず。
男は大河の頭上から侮蔑を含んだような口調で何かを言い放つ。

「???? ??? ???? ?? ???.
? ??.
??? ????.」

そのまま大河の身体を片手で引き上げる。
朦朧となる意識で、大河の瞳は自分の目の前で――自分の人生を終わらせてしまうであろう攻撃を放つための握りこぶしを作る男の姿を映していた。

「??? ????.
?? ??? ??? ?? ??.」

男が何を言ったのか分からない。
だが、この一撃を食らってしまえば……そのまま自分の人生は終わるだろう。
うっすらとそんな事を考える大河。
そんな大河のぼやけた視界に――おもむろには信じ難い光景が展開された。

大河の見た信じられない光景――それは。

『自分を殴っていた男が目の前で変貌したこと』だった。

先ほどまで人間の顔であったはずの男の顔には赤い瞳のようなものが四つ出現し。
口元からは鉤状の牙が二本飛び出ていた。
視線を下に移すと、男の身体もまた信じられないような変化を遂げていた。
先ほどまで着ていたスーツが破れ去り。
不自然なまでに発達した筋肉、針のような毛に覆われた全身。
……そして、男の身体から腕が六本生えていた。
それは……まるで『蜘蛛』のような姿だった。

(何だ? 一体何が起こっているんだ!?)

もはや叫び声を上げることすら適わず、大河は混乱する頭で目の前で起きている状況を整理しようと必死だった。
だが、こんな現実離れした、まるでSF映画の中でしか起こりえないような状況に混乱は深まる一方であった。

――混乱する大河を尻目に、目の前の蜘蛛の化け物は大河に向かって鉤爪のように変化した触手を振り下ろそうとしていた。

「ヒィッ!! バケモノ!!!!」

その叫び声に蜘蛛の化け物の攻撃の手が一瞬止まった。
声の方向には不運にも偶然通りがかってしまったのだろう。
中年のサラリーマンが腰を抜かし、尻餅をつきながら倒れていた。

蜘蛛の化け物がサラリーマンの方向に顔を向ける。
刹那、蜘蛛の口から白い糸のようなものが噴出された。
その糸はまるで意思を持っているかのように腰を抜かすサラリーマンを絡め取り、噴出された勢いのままサラリーマンを背後の壁に白い糸ごと縛りつけた。

「??? ???…….
?, ?? ???.」

大河の方向に顔を戻し、蜘蛛の化け物が何かを呟いた。

もはや……大河が助かる術は――皆無だった。

人は――死ぬ直前に『走馬灯』を見る。
それはきっと、死の危機に際して『それまでの人生の経験から助かる術を模索する』ためにそれまでの人生がプレイバックされるのだろう。

蜘蛛の化け物に自分の命を奪われる間際、加納 大河は『走馬灯』を見た。
だが、それは世間で言われるような『人生のプレイバック』の走馬灯では無かった。
大河の脳裏に浮かんでいたもの……それは『数字の羅列』だった。

まるでスローモーションのようにゆっくりと振り下ろされる蜘蛛の鉤爪。
コマ送りのように見える世界の合間に――『0と1の数字の羅列』が大河の視界に紛れ込む。
それはコンピューターが演算をしているかのような動きで『0と1』の数字が激しく入れ替わる。

その間にもゆっくり、ゆっくりとしたコマ動きで鉤爪が大河の首筋に近付く――。
あと1コマの動きで鉤爪が大河に到達する瞬間――。

大河の脳裏に浮かぶ数字の羅列が全て『0』を表示した!

その瞬間――大河の身体が青白い閃光に包まれる。

青白い閃光の収まった直後。
蜘蛛の鉤爪が大河の首筋に命中した。
自分の身に起こった変化に気が付かぬまま大河は観念する。

――が、すでに大河の身に奇跡は起こっていた。

ガキンッ!!

硬質の物質同士がぶつかったような音が路地裏に鳴り響く。
大河の首筋を中心に火花が巻き起こった!

カキーン……。

地面に金属片が落ちたような乾いた音が響く。
その音を響かせた物体……それは蜘蛛の折れた鉤爪だった。

「こ、コイツ!! やはり『ゼロ』だったのか!」

蜘蛛の化け物の驚いたような叫び声が――はっきりと大河にも聞こえた。
蜘蛛男の話す言葉は先ほどまでと変わらないのだが、なぜか今の大河にはその意味までがちゃんと理解できる。

(ゼ……ロ?)

蜘蛛男にいまだ首筋を掴まれ、持ち上げられたままの格好で大河は自分の腕を見た。
何が起きているか理解できない。
大河の視界に見える自分の手は――まるで甲冑に覆われたような姿だった。

身体の痛みも、掴まれている苦しさもまだ大河の中に深い根を張っている。
だが、気のせいか、先ほどまでに比べると痛みも苦しみもかなり和らいでいた。

「何とかして……逃げなきゃ……」

大河は――思い切りの力で蜘蛛男の腕を掴んだ!

グチャッ!!

まるで柔らかい物を掴んだような感触があった。
思い切り握った手は……そのまま拳の形を容易く形成した。
それと同時に今まで蜘蛛男に掴まれ、宙に浮いていたはずの大河の身体が地面に足の着く状態となった。

――蜘蛛男の触手が……まるで紙細工の如く破壊されていた。

「な……なんだと!!」

驚きと、腕を千切られた痛みからだろうか。
蜘蛛男が呻くように叫んだ。
そのまま眼前に立つ大河から距離を取るように後ろへ下がる蜘蛛男。
それまで余裕で弱者をいたぶる強者のような表情だったものが、まるで恐怖に引きつるような表情に歪む。

ズサッ……。

そんな蜘蛛男に近付くべく、大河が足を一歩踏み出した瞬間――。

「クソッ!! ここはひとまず撤退だ!!」

蜘蛛男が脱兎の如く、ビルの間を伝うように逃げ出した。
そんな蜘蛛男を追いかけることも適わず、その場に膝から崩れ落ちる大河。

「助かった……のか?」

脱力感と、安堵感の中、大河は誰かに尋ねるような口調でそう呟いた。
まるで異世界に迷い込んでしまったような……そんな気持ちであった。

「そうだ……! 俺の身体!」

思い出したように自分の身体が映るものを探す。
キョロキョロと周囲を探す。
1メートルほど先に小さな水溜りを見つけた。

四つん這いの態勢のまま水溜りに駆け寄り、水面に映る自分の姿を見た。

「これが……俺?」

水溜りに映る大河の姿――それは先ほどの蜘蛛男と同じく『異形の物』だった。
まるで白いバッタのような顔、ロボットのような身体……。
そこに映る自分の姿は、まるで――それまでの日常から隔絶された自分を象徴するような『おぞましい物』に大河には視えた。

「う……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」

まるで、嘆きとも慟哭とも、怒りともつかないような大河の叫び声が……月に照らされた裏路地に響き渡った。
[ 2007/01/01 23:59 ] 超番外 仮面ライダー 0 ~ZERO~ | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

黒矢 一実

Author:黒矢 一実
主に短編小説を書いています。
現在のところ更新は不定期です。
コメントを頂けると非常に嬉しいです。
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