僕は狂っていく~ぼくるい~

創作小説「僕は狂っていく」まとめブログです。 ジャンルは現代モノです。 基本的に「奇妙な話」です。

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-)

序章 

目が覚める
朝かどうかは分からない。
時間の感覚というものはとっくに失っている。
目を開けるといつもの白い天井

今日もおかしな日常が始まる。

起きてすぐにする事は
ドアを開けて表に出る
今日は私が一番乗りのようだ。
少し待っていると
黒い服を着た
男や女、年齢は様々な者たちが
私と同じようにドアを開けて出てくる。

スポンサーサイト
[ 2007/01/09 23:59 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

9人 

彼らの黒い服の胸の部分には
数字で『1~8』の番号が書いてある。
『9』は昨日欠員になったばっかりだ。
かくいう私も黒い服を着て
服の胸の部分には『』という番号が振ってある

最初はこの『4』という番号は嫌だった。
4=死』なんて日本人特有の語呂合わせだ。
ここに来てすでに1年ほど経過しただろうか
今ではこの『4』という番号も
『4』番打者だ、くらいに思える
私にとって縁起の良い番号になっている。

8人がひたすら真っ白な広間に集まると
奥の白い壁の奥から
ゴトッっという物音が響く
ベルトコンベアーが動くような音
ウィンウィンウィンという音に変わり
私たちのすぐ傍に来たな、と感じると
その音が止まる。

音が止まると少し間があって
白い壁がスライドして開く
中には私たちと同じように
黒い服を着た若い男が立っていた。
胸の部分には『9』と書いてある
この若者が今回の補充される人間のようだ。

[ 2007/01/09 23:57 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

説明役 

若者を見届けると
みんなまた自分の部屋に帰っていく
この広間に9人揃ったあとは
食事前まで自由時間
それがここのルールだからだ。
もちろん私も部屋に帰る

……が、ドアが開かない
やれやれ、どうやら私が今回の説明役のようだ。

私は開いた壁から広間に出て
とまどっている若者に近寄り声をかける。
「はじめまして、ようこそ」
若者は訝しげな顔で私を見ている
ここに来るものは最初はみんなそうだ。
「怪しまないでくださいね。私も同じ境遇のものですから」
私がここに来たのはおよそ1年前
似たような説明を受けたことを
今でも思い出す。

[ 2007/01/09 23:55 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

分からない説明 

1年前、私は勤めていた会社を定年退職し
老後の身の振り方を考えていた。
幸い体は丈夫なほうだったので
次の転職に備え朝にジョギングをする毎日だった。
その朝もいつものように公園でジョギングをしていた。
しかし、気が付くと私は真っ暗闇の中にいた
足元でウィンウィンウィンとベルトコンベアーのような音が聞こえる。
ガタンッと停止するような音が聞こえ
目の前が急に真っ白になった。
視界が戻るとそこに立っていたのは
黒い、胸に『』と書かれた服を着ている30代くらいの女性。

「はじめまして、こんにちは」
状況が飲み込めない私に女性は続けた。
「怪しまないでくださいね。今から説明します」
私はとりあえず女性の説明を受けることにした。
「ここがどこなのかは私も分かりません。
ええと、あなたの番号は『4』ね
向こうのドアに『4』と書かれた部屋があります。
そこで待機していて下さい。
じきに集合時間になりますから。」
要領を得ない説明に私は女性に質問する
「よく分からないのですが、集合時間とは……?」
女性は表情を崩さずに言う
「集合時間は……その時になれば分かると思います。それじゃ……」
それだけ言うと女性は『2』と書かれたドアに入ってしまった。

[ 2007/01/09 23:53 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

集合時間 

慌てて女性を追いかけ『2』のドアを開けようとしたが
どうやってもノブを掴めない
ドアを叩いてみると
「とりあえず、自分の部屋で待ったほうがいいですよ?」
と女性の声
それ以上はドアを叩いても声をかけても女性からの返答は無かった

私は女性に言われた通りに『4』と書かれたドアを開けた
今度はドアはちゃんと開いた。
ドアの内側はまたしても真っ白
中には粗末な白いベッドと白い便器
まるで囚人の部屋のようだ。
仕方なく私はベッドに腰掛ける。

集合時間』はすぐに分かった。
頭の中にサイレンのような音が鳴り響く
耳から聞こえるのでは無く
頭の中に直接響いてくるのだ
慌てて私はドアから外に出る
外には私と同じように黒い服を着た8人の男女が立っていた。
胸には『1~9』の数字
『4』だけが無い
私が『4』だからのようだ。

全員、壁の方向を見ている
すると壁の方向から
ベルトコンベアーのような音が響き
私たちの前で停止する音がする
少しの間をおいて壁がスライドして開く

[ 2007/01/09 23:51 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

合図 

中には『1~9』のナンバーが書かれたコンテナが9つ置いてあった。

自分の番号のコンテナを開いて中身を取るのよ
先ほどの女性が私に教えてくれた。
箱を開けると中身は……これは鉄パイプか?
手に取ると、思ったより軽い
周りを見ると
他の人たちも皆それぞれ手に何か持っている。
ナイフ、包丁、ハンマー、角材……軍手だけの人もいる。
みんな少しずつ距離を置くように散らばっていく

私がキョロキョロしていると
どこからともなく『』が響いた

子供の玩具のような
機械の合成音のような声が広間に響く

ソレデハ、ミナサン、キョウノゴハンノタメニガンバッテクダサイ

その言葉が合図のように
私から2メートルほど離れた距離にいた角材を持った男が
私に殴りかかってきた!
すかさずその攻撃を避ける私。
学生時代に剣道をやっていた腕は鈍ってはいない
「せいやぁああああああああ!!!」
男の攻撃を避けながら
鉄パイプを男の頭めがけて振り下ろす
軽いので効果のほどは分からないが牽制はできるはず……

グシャッ!
鈍い感触がして男が床に崩れ落ちる
頭から大量の血を流している。
ピクッ!ピクッ!と痙攣して男は動かない。

[ 2007/01/09 23:49 ] 第九章  部屋 | TB(0) | CM(0)

食事 

まだ他の人間が襲ってくるのか?
私がもう一度身構えると

私の正面に立った軍手をはめた男が
「じいさん、やるね」
一言残して壁の方向に向かって歩き出す。
それで終わりだった。
他の皆も壁に近付いていく。

私が唖然としていると
また機械音のような声が響く

『ソレデハショクジノジカンデス』

声と同時に壁がスライドして開く
中にはパンが8個
スープが入った器が8皿
牛乳が入ったコップが8つ

ここにいる人間は9人
動ける人間は8人……

9人が争い、1人が倒れた時点で食事の時間
それがここのたったひとつのルールだ。

食事は一日一回。
用意されるのは8人分。

[ 2007/01/09 23:45 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

日々是戦 

部屋に食事を持ち帰り、食べる。
食事が終わり食器をベルトコンベアーに載せる。
周りと同じ行動を取った。
先ほど私を襲った男は生きていたようだ。
頭を押さえながら自分の番号
『6』と書かれた部屋に戻っていく。

「あいつもおしまいだな」
胸に『1』と書かれた男が呟く
私がその言葉の意味を知るのは
翌日になってからだった。

翌朝、朝なのかどうかは分からないが
目が覚める。
ドアを開けると広間に他の人間も集合している。
私を襲った男もいる。
頭の怪我は……なんと全快しているようだ。
9人が揃うとみんな何も言わずに自分の部屋に戻っていく
互いに言葉は交わさない
私も部屋に戻った。
集合時間まで……休憩だ。

集合時間、昨日と同じようにみんな集まる
それぞれの武器を手にとり
他の者を距離を広げる。
今日の武器もあまり変わりは無い
ただ、私の武器が木刀に。
私を襲った男の武器は日本刀に変わっていた。
昨日を違うのは……みんな昨日私を襲った男に狙いをつけている

『ソレデハ、ミナサン、キョウノゴハンノタメニガンバッテクダサイ』

その言葉を合図に今日の戦いが始まる。

[ 2007/01/09 23:43 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

掟 

皆が男を狙った理由はすぐに分かった。
男は空腹で全然動けないのだ
腰がフラフラして狙いが定まっていない。

ギャア!」
すぐに包丁を持った女性に喉を切られてしまった。
血の池を作りながら床に倒れる男
戦闘が終わると、無性に腹が空いてきた

『ソレデハショクジノジカンデス』

昨日と同じく食事が運ばれる。
部屋で食事をした後
男を見ると、また生きていたようだ。
怪我も無くなっており
血の池も消えている。
ただ、空腹のためか動けないようだ。

翌日も、その翌日も男は空腹のために敗北し
敗北したために飢える。
3日が過ぎ、空腹に耐えれなくなったのか
男は飢えて死んだ

男が死んだ翌日
広間に集合すると新たな補充人員が運ばれてきた。
今度は若い女だった。男の死体はいつの間にか消えていた

ここで気が付いたのだが
戦いで敗れても、その傷では絶対に死なない
ここで死ぬのは飢えだけのようだ

また、食事前の戦いに支給される武器は
全体のレベルを調整しているようだった
強い者には弱い武器、弱い者には強い武器といった具合に
一度、子供が来たときには
武器が猟銃だったこともあった。

子供は3人ほどは勝ち抜いたが
油断で銃と叩き落とされ
ハンマーで頭を殴られ敗北。

一度敗北したものの常にとらわれ
飢えて死んでいった。
見知らぬ者より、ここでは自分が飢えないことが何より大切なのだ

[ 2007/01/09 23:39 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

ありふれた光景 

場面は若い男に戻る
私は男を『9』の部屋に入るように指示する。
そして集合時間に広間に来なさいと伝えた。

これ以上の情報は自分で把握してもらう。
ここでのルール、それは弱肉強食だ。

集合時間になった。
先ほどの若い男も広間に来ている
いつものように壁が開く。
中には9つのコンテナ
自分の番号を空けなさい
若い男にそれだけ伝える。

これで私の説明役は終わりだ
後は自分で何とかしてもらうしかない。
私も飢えないために必死なのだ。

男は鎌というなかなかの武器を配給されたが
状況を飲み込めずあっさりと敗北した。
ナイフを持った若い女性に背後から一突き
可哀相だが、これもルールだ。

4日後、若い男はそのまま飢えて死んでいった。

そんな繰り返しがもう1年ほど続いている
誰も会話をしないので
いつからこの部屋があるのか?
なぜこんなことをしているのか?
全く何もわからない。
ただ、今日飢えて死なないために
皆必死で戦っている

[ 2007/01/09 23:36 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

転機 

若い男の補充で来たのは
40代くらいの男だった。

不運にもまた私が説明役となった。

説明を始めようとすると男が言った
あ、またここですか。今回は……『9』か

私は耳を疑った!
ここを脱出する方法があるのか

男は私とろくに会話をせずに『9』の部屋に消えていった。

部屋で男の言葉を思い返す

「あ、またここですか。今回は……『9』か」

男は間違いなく一度この部屋に来たことがあるのだ。
そして、再びこの部屋に来たということは……
この部屋から出れるのだ

あの男は脱出方法を知っている。
男の行動を注意して見なければ……

[ 2007/01/09 23:32 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

意外 

集合時間
私の注意は全てあの男に向けられている……
脱出の鍵を握る男……

私は木刀を握り締める
いざとなればあの男も守らねば……
脱出方法を聞きだすまでは……

『ソレデハ、ミナサン、キョウノゴハンノタメニガンバッテクダサイ』

いつもの合図!
その瞬間……男が武器を捨てた

「私は食事はいらないです。負けで結構です

え……?
私も周囲も呆気にとられる

この男はルールを分かっていて言っているのか?
『ソレデハショクジノジカンデス』
男の要求は通ったようだ。

食事が運ばれる。
皆自分の食事を持ちながら男を警戒する

男は横取りする気など無いようだ。
そのまま自分の部屋へと帰っていった。

[ 2007/01/09 23:27 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

放棄 

翌日も、その翌日も
男は戦いを放棄するだけだった。

今までにもこんな奴らはいた。

最初からあきらめている奴
坊主や平和主義者

すぐに飢えて死んでいった。

この男も同じ道を辿るつもりか?

6日が経過し
男はすでに部屋に帰る体力も無い
広間で虫の息になっていた。

このままで終わるはずがない……

床に倒れている男に話しかける

「アンタ……ここの出かたを知ってるんじゃないのかね?」

ハァ……ハァ……と荒い息をつきながら
土気色になった顔で男がニヤリと笑う
「なん……だ。気が付いて……たんですね」

やっぱり!この男は何か知っているんだ!

[ 2007/01/09 23:21 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

終わりの始まり 

「教えてくれ!」

必死に懇願する私
「他の……人には……内緒ですよ」

死の間際、彼が教えてくれたこと。

ここは『九死に一生を得る部屋』なのだ
9人の現実で死に掛けている人間が
この部屋でたった一つの生を奪い合う。

この部屋から出て生き返る方法はただ一つ

……この部屋で飢えて死ぬこと

これだけ私に教えて、男は飢死した。

男が死に
翌日の補充は少女だった。

まあ誰でも構わない
次に飢えて死ぬのは……私だ。

飢えて死ねば……現実に戻れるのだ。
この狂った世界から脱出できる

『ソレデハ、ミナサン、キョウノゴハンノタメニガンバッテクダサイ』

さあ、これが終わりの始まりだ

[ 2007/01/09 23:18 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

脱出 

私は武器を捨てた

「私はもう疲れた。皆で食べてくれ」

食べない理由は話さない。
生き返るのは私だけで充分だ。

『ソレデハショクジノジカンデス』

皆が食事を摂る。
私を襲う猛烈な空腹感

でも、これが終われば……やっとここから出れる

あれから5日が経った……はずだ。

体中が痛い……ダルい……
鉛のように重い
目がかすむ……唇が乾く……
誰か……助けてくれ

ダレカ……

そこで私の意識は真っ白になった

[ 2007/01/09 23:12 ] 第九章  部屋 | TB(0) | CM(0)

生還 

目が覚めるとそこは真っ白では無かった

真っ暗な闇の中

……やった!脱出できたんだ!
だが、体が重い

幸いまだ夜のようだ……もう一眠りして
目が覚めたら……生きていることを充分に喜ぼうじゃないか……

何か……暑い……熱い……アツイ!!!
火だ!燃えている!火事か?

誰か助けて!助けて!アツイアツイアツイアツアツアアアアアアアアアアアアアア

[ 2007/01/09 23:09 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

エピローグ 

「でも義姉さん、これでやっと一安心ね」
「そうね……1年も意識不明だったけど、昨日、心停止して……」
「まさかジョギング中に心臓発作で1年も意識不明になるなんてね」
「本当に義姉さんには迷惑かけたわ」
「いいのよ、退職金もあるし。これから悠々自適の生活だわ」
「死んだ兄さんには悪いけどね」

男の火葬も終わり、一安心の一家……

[ 2007/01/09 23:00 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | コメント(-)

第九章専用コメント欄 

第九章のご意見、感想はこちらにどうぞ



[ 2007/01/09 21:00 ] 第九章  部屋 | トラックバック(-) | CM(0)
プロフィール

黒矢 一実

Author:黒矢 一実
主に短編小説を書いています。
現在のところ更新は不定期です。
コメントを頂けると非常に嬉しいです。
リンクはフリーです。
リンクされる際にメッセージを一言いただければ嬉しいです。
相互リンクも募集してます。

今このページを見てる人
現在の閲覧者数:
これまでこのページに来てくれた人
メールはこちらに

名前:
メール:
件名:
本文:



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。