僕は狂っていく~ぼくるい~

創作小説「僕は狂っていく」まとめブログです。 ジャンルは現代モノです。 基本的に「奇妙な話」です。

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序章 

「だって、もったいないでしょ?」
それが彼女の口癖。
悪く言えばケチくさい。
良く言えば倹約家。
たまに抜けたところはあるけれど
基本的にはしっかりもの。

そんな彼女を僕はずっと見守る。

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[ 2007/01/07 21:59 ] 第十一章 もったいない | トラックバック(-) | コメント(-)

出会った頃から 

彼女との出会いは
会社の同僚が主催した合コン
同僚の女友達が3人と
僕の会社の同僚を含めた男3人の
3対3での飲み会で知り合った。
その飲み会の席で
彼女は持参のタッパーに残った料理を詰めて
持ち帰っていた。
「だって、もったいないでしょ?」

ハハ、なんかケチくさい子だなぁ
それが彼女の第一印象。

その合コンのメンバーはなぜかみんな気が合って
その後も何度か飲み会を開いた。
何度か話してるうちに
僕も彼女と気が合い
2人で個人的にデートすることになった。

付き合って分かったのだが
彼女は決してケチなわけでは無かった
デートで割カンになることもあれば
僕の誕生日にはおごってもくれる。

ただ、食べ物を残したり
使えるものを捨てるのは「もったいない」
これが徹底している。

僕とのデートでも必ずタッパーは持参
自分の食べ残しや僕の食べ残しを必ず持って帰る。
「ペットにでもあげてるのかな?」
一度、疑問に思って聞いてみたことがある。
その時の答えは
「ペットは飼ってないよ~、明日のお弁当に入れるんだ」
なるほど。

彼女は倹約家、どこにでもいる女の子。
しっかり者で物を粗末にするのを嫌う度合いが
人よりちょっぴり大きいだけ。

[ 2007/01/07 21:57 ] 第十一章 もったいない | トラックバック(-) | コメント(-)

結婚 

自立した大人が付き合いを続け
独身主義とかでなく、経済的に余裕をもてていれば
やはり自然と結婚へ流れる。

僕も彼女と結婚することになった。
この時も彼女の「もったいない」は発揮されて
式場は普通にホテルの宴会場を借りたのだが
衣装は持参。
彼女のお母さんが着た服だそうだ。
まだまだ着れるがデザインは少し古めかしい。
別に思い入れがあるわけでは無いようで
彼女自身もあまり気に入らないデザインとこぼす。

「別にドレスもレンタルしたらいいんじゃない?」
そう聞いてみても
「だって、もったいないじゃん」
ヘンなところで徹底してる。

新居への引越しのときも大変だった。
彼女の部屋の荷物と俺の部屋の荷物。
「新しい家具を買うのはもったいない!」
そう主張して一切退かない彼女の意見により
お互いの家具を新居に持ち寄って新生活をすることにした。
しかし、ここでも倹約ぶりを発揮する。
俺の部屋の使える家具でさえ
捨てるのはもったいないからダメ!」
と言い出したのだ。
だが、2人の家具を全部新居に持ち寄ったら
生活どころか座るスペースさえも無くなる。

なんとか彼女をなだめていくつかの家具は処分することに。
俺が新居に持ち込むのは
PC、レンジ、衣装ケース、テレビ、DVDデッキ。

それと独身時代から飼っていた小型犬。名前はアイ
一人暮らしの寂しさを慰めてくれた大事な家族だ。
連れていくことを彼女も納得してくれたし、ペット可能な新居も見つけた。

大変な思いをしたがやっと新生活がスタートする。

[ 2007/01/07 21:54 ] 第十一章 もったいない | トラックバック(-) | コメント(-)

料理上手 

結婚してからも彼女の性格は変わらない。
昼食は彼女の作ってくれる弁当に変わったのだが
当然のごとく中身は前日の余り物だ。
彼女は料理が上手だから文句は無いのだけれど。
会社の付き合いで行く食事にも
タッパーを持って行って欲しいと頼まれた。
さすがにそれは断ったけど。

アイの食生活も変わったようだ。
これまではドッグフード一辺倒だったが
人間が食べた残りの食材を使った料理がご飯になった。
アイ自身はこちらの方が好みのようで
彼女は犬の料理を作らせてもなかなかの腕前のようだった。

ある日、会社から帰るとアイが死んでいた
彼女が帰宅した時にはすでに死んでいたそうだ。
留守中に高いところに自分で登ってしまい
そこから落ちて首の骨が折れてしまったらしい。
悲しいが仕方ない。
命あるものはいずれ死んでしまう
自分に何とかそう言い聞かせる。

「明日、保健所に連絡して死体を引き取ってもらおうね
本音ではお墓なり作ってあげたいが
マンション暮らしであり埋める場所は無い。
ペット用の墓地を購入するほどの余裕もない。
ツライところではあるが彼女に保健所への連絡を頼んだ。

翌日、会社から帰宅すると
アイの遺体は引き取られた後だった
少し感傷にひたり食欲のない僕に
彼女がスープを出してくれる。
「元気が無いのは分かるけど、元気出してね?」
肉と野菜で作られた優しい味のスープ
ふとテーブルを見ると
「簡単!家庭でできる韓国料理の本」と題された本が置いてある。
「そのスープを作るのに見たのよ。韓国料理でポシンタンって言うんだ」
韓国の有名なスタミナ料理だそうだ。
元気の無い僕を元気づけるために一生懸命作ってくれたようだ。

優しい彼女、少し人より倹約家なだけ。

[ 2007/01/07 21:51 ] 第十一章 もったいない | トラックバック(-) | コメント(-)

こんにちわ赤ちゃん 

僕たち夫婦に子供ができた。
現在3ヶ月だ!
嬉しさがこみ上げる
ベビー用品を買わなきゃね」
とはしゃぐ僕に
「実家に私が子供のときのがあるからもったいないじゃん」
あくまで「もったいない」……らしい。

倹約家な彼女、ママになる彼女。

子供が生まれた。
ベビー用品は僕が心配するまでもなく
僕と彼女の両親が頼みもしないベビー用品を
まるで競うように買って持ってきてくれる。

ベビーベッドに眠る子供を見ながら
彼女が淹れてくれたコーヒーを飲む。
うぇ!妙に甘ったるい
料理が上手な彼女にしては珍しい。

「あれ?やっぱり飲めなった?」

いつもと違うことをしたらしい。
何をしたのか聞いてみると

「赤ちゃんが飲まなかった母乳を入れたの。だって……もったいないじゃん?」

母乳ってこんな味なのか。
死ぬほどお願いして母乳を僕に飲ませるのはやめてもらった。

目の前に食材になりそうなものがあると使わずにはいられない彼女

[ 2007/01/07 21:45 ] 第十一章 もったいない | トラックバック(-) | コメント(-)

悲劇と狂気 

子供が2歳になったとき、悲劇が訪れた。
信号を無視したトラックに轢かれ……即死だった。
悲しみにくれる僕と彼女。
しめやかに葬儀が行われ。
僕と彼女の愛の結晶は灰になった。
この時ばかりは彼女の「もったいない」は姿を現さなかった。

……はずだった

子供を亡くした彼女。実は狂っていた彼女

子供を亡くして4日目。
悲しくても腹は減る。
「食べなきゃ元気になれないよ。天国で子供も悲しむよ?」
元気を出すために彼女が用意した料理はペッパーステーキ
肉は柔らかく、適度に効いたペッパーの刺激。
子供を亡くした悲しみがなければ文句なしに美味い。
ここでふと気が付いた疑問。
子供を亡くしてから、俺も彼女も家から一歩も出ていない

「どう?美味しい?」
突然の彼女の質問。
「あ、ああ。美味いよ」
いつもは聞かれない質問に少し戸惑う。

「これであの子も浮かばれるわ」
安心したような笑顔

外出していない彼女、食卓に肉を並べた彼女。

食事の最中なのに

ふいに感じた疑問
彼女の意味深な言葉
言い知れぬ不安

僕は冷蔵庫に駆け寄った
震える手で冷蔵庫のドアを開く。

中には……火葬されたはずの……細切れにされた僕たちの子供

「だって……ただ燃やされるのは……もったいないじゃん?」

自分の子供を食材にした彼女、狂っている彼女

[ 2007/01/07 21:39 ] 第十一章 もったいない | トラックバック(-) | コメント(-)

出会った頃から 

「出会った頃から……あなたも料理してみたかったの」
首を絞められる、ロープ?電気のコード?
分からない、薄れていく意識。

「ちゃんと……全部食べてあげるから。安心して?」

この世で僕が最後に聞いた言葉

[ 2007/01/07 21:30 ] 第十一章 もったいない | トラックバック(-) | コメント(-)

終幕 

肉という肉は全て彼女に食べられ
骨はスープの出汁をとった後に砕かれて
ベランダの植木の中にまかれて肥料にされた。
僕の意識は物を言わない植木の中に
彼女のような言い方をするなら

「魂を無駄にするのも『もったいない』」といったところか。

彼女には新しい彼氏ができたようだ。
時間を無駄にするのがもったいない彼女
僕と子供を亡くした悲しみを乗り越えた彼女。
倹約家は相変わらずの彼女。

そんな彼女を僕はずっと見守る。
ベランダから……ずっと。

[ 2007/01/07 21:21 ] 第十一章 もったいない | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

黒矢 一実

Author:黒矢 一実
主に短編小説を書いています。
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